期間限定の恋人ごっこ【桃】

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｢てかさっき"Aちゃん"って言った？｣





キスされたことの方が衝撃でスルーして出てきたけど、お姉ちゃんという呼び方を大ちゃんはやめたということだよね？




それってほんとに私は"彼女"になったってこと？







｢まさか人生初の彼氏が幼なじみのアイドルだなんて｣




それこそ妄想の世界だ。


いやそれよりも気にしなしゃいけないのは他にある。





『 期間限定の恋人ごっこしよ？』




おままごとの延長ですか？


良い提案でしょ？ とも言ってたけど、冷静になって考えたらちょっとムカつく。




絶対からかってんじゃん。





｢……でも、キスしちゃった、｣




何度も啄むようなキスの嵐が降ってきて、あまりの甘さに蕩けた。

ただ唇を合わせただけにすぎないのに。

キスって、あんなに気持ちよかったかな？



記憶の端を辿ってみて、微かに思い出せるキスの記憶。



確か２０歳の時だったような？




｢ダメだ、どうでもよすぎて思い出せない｣





てか毎員電車の中で余計な事は考えないようにしよう。


危うく乗り過ごすところだった。








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相変わらず仕事はパソコンと睨めっこするか電話対応、ついでにお茶組み。


そして今日も無事に定時で終わる。






｢ねえ、ちょっと気になったんだけど｣





ロッカーの扉を閉めて、さて帰りますかって時に明香里に呼び止められる。


もう夕方だというのに綺麗に巻かれた髪がキープされてるのは凄いな。


私、直毛だから持たないんだよね。






｢Aさ、シャンプーの香りがいつもと違うんだけど、昨日何処かに泊まったでしょ？｣


｢え？ シャンプー？｣





毛先を掴んで嗅いでみるけど、そんなに分かる？






｢朝すれ違った時に気付いてさ。ちょっと誰のとこに泊まったのよ！ 男？男なの？｣

｢近い近い｣



勘が鋭いな。

長い睫毛をバサバサ揺らして私が吐くまで帰さないぞって気迫で迫られちゃ話さないのは難しい。

長い付き合いだからね。


てなわけで今日もまっすぐ家には帰れそうもない。





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