期間限定の恋人ごっこ【桃】

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大ちゃんは朝ご飯を食べたあと、何事もなかったように食器を片付けようとした。






｢あ、片付けはやっとくから、お稽古間に合うの？｣

｢えっと、あ、やば！もう行かなきゃ！｣






時間を見て慌てて荷物をとって玄関に向かう大ちゃんは、靴を履いて振り向いた。






｢Aねぇ、色々ありがとうね！ あのさ、また佐久間と遊んでくれる？｣



きゅるるんな瞳で見上げられたら、遊ばないなんて選択肢する女はこの世にいるだろうか？

そもそも私はそんな選択肢は最初からないけどね。





｢もちろん。また遊ぼうね｣

｢よっしゃ！ じゃあまた連絡する！！｣

｢うん！ 行ってらっしゃーい｣

｢……行ってきますっ｣





まだ朝早いからボリューム下げて言いながら手を振って見送ると、大ちゃんもにかっと笑って手を振り返してくれた。



廊下の角を曲がって階段を降りる音を聞いて、足音が遠のいて行けば、ふうと知らずうちに息が漏れた。






｢……なんだろう。時々、男の子になるよね大ちゃん｣




そしてそんな大ちゃんにドキドキするんだけど、それを誤魔化すのに必死になったよ。


やっぱり１７年の月日は思ったよりも長い。









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昼休憩が終わろうとした頃、一件のメッセージを知らせる音がピロリンと鳴った。






大ちゃんたふんAねぇのとこにブレスレット忘れてる。今度会う時まで預かってて!




ブレスレット……ちゃんと確認してあげれば良かった。




Aわかった。急ぐなら届けるから言ってね?




送信……と。


さてお昼からもお仕事頑張りますか！！





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