君と、恋の話がしたい。 (ページ36)

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永瀬と彼女が二人で出掛けたという話はあっという間に校内で噂になっていた。
冬が始まる前、11月頃。
けれど、「あの永瀬に彼女が」とか「成瀬と永瀬ができてる」とかそういう話は後回しだった。

彼女が学校に来れなくなった。
入院することになったらしい。

永瀬はやっぱり何も知らなかった。
今回だって彼女の方から誘ってきたらしい。
永瀬の事を責めるわけではない。だって彼奴は何も知らなかったんだから。
こういうことが起きる前に永瀬にはやっぱり俺から話しておくべきだったと後悔した。

成瀬Aが病気だったということもまた、あっという間に噂になっていた。
登校さえしていたものの永瀬は落ちていた。
たった1人、クラスのスターのこの有様で何でもなかった日常の変化を目の当たりにしたような。
そのくらい、永瀬は落ちていた。

廉「髙橋」

海「何」

廉「ごめん。俺、何も知らんくて」

海「....永瀬が悪いわけじゃないよ。」

廉「ごめん」

周囲の野次が少し落ち着いた頃に永瀬はそう言いにきた。あの永瀬が只管俺に謝った。

別に永瀬の見方をするわけでもないけれど永瀬にとったら災難な話だと思う。
彼女の方から2人でバッティングセンターに行こうと誘われたらしい。
突然の彼女の発作は永瀬の所為でも何でもない。
きっと、偶然そのタイミングで。
全ての責任を急に押し付けられるようなそんなタイミングだっただけで。
だけどだからこそ永瀬は責任を感じているみたいだった。

廉「髙橋は全部知ってたん」

海「うん。ごめん俺が何も教えなかったから」

廉「違う。俺が悪い」

海「永瀬の所為じゃないよ」

この間までわかりやすく対立していた俺達なのに、お互いの傷を舐め合うようだった。
だけどそうでもしなくちゃお互いに崩れてしまいそうな位に思うことがあったのだ。

廉「....目、覚まさなかったらどうしよう」

今にも泣きそうだった。
それは俺も同じ気持ちだった。
平静としていたけれどそれは全部嘘だった。
強がったふりをしていたけれど、それも全部そうでもしなくちゃやっていけなかったから。

彼女にもしも明日がなかったら。
そう、考えれば考えるほど堪らなかった。