Emotion5

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嫌いになんてなれなかった。
ずっと浮気されていたのに、もう別れているのに。

Aはひどい奴だ。
俺、結構男前だし紳士だし遠距離になったって他の女の子に目移りだってしてない。

なのにAは何だ？
大阪行ってから早々に新しい男作ってよろしくやってたわけやろ？信じられん。

「...今日すごく楽しかった。廉あのね、私...」


...でも、そんな顔されたら、責める気にもなれないじゃないか。

廉「聞きた、ないなぁ」

「うん、でもね言うの。私、全部清算しないと次に進めない。本当に勝手だけど、進みたいって思ったの」

廉「...」

「私ね、好きな人ができた。廉と付き合ってる間に。でもね、その人と前向きになろうとも思えなかったの。」

廉「...俺への罪悪感でか？」

「...ううん。同じくらい廉のことが大好きだったから。廉との未来、何度も想像してたから」

Aのまぶたが揺れる。
思わず手を伸ばしたら、その手はすぐに振り払われた。

「...優しくしないで、」

廉「A」

「綺麗事だって思われても仕方ないし」

廉「思ってないよ」

優しくしないでと言われても、その涙に我慢できずに抱きしめてしまうお人好しだからいけないんだろう。もっと感情的なってAのことを強引にでも引き留めておけないから、俺はダメなんだろうと思う。

でも、そのくらいAのことが大切だ。
いくら傷つけられてもAのこと傷つけたいとは思わない。

馬鹿だ、世界一。

廉「大丈夫。俺はAなんか大嫌いや」

「...廉、私は廉のことが本当に大好きだったよ」

廉「...うん、全部わかってるから」

震えるAの肩をみる。
沢山悩んで沢山泣いたんだろうなと思う。
わかるのだ。本当に、全部全部。大切だから。

廉「今度はちゃんと幸せになって」


Aに最後のキスをした。
噛み締めるように、少しでも後悔してくれるように。

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