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「えっと、こんにちは……？」
ゾムの瞳が困惑の色に染まる。
予想していた出来事だとはいえ、これは結構きつい。
どうやらゾムは、恋人のことも綺麗さっぱり忘れているようだ。
ゾムに忘れられているということがショックすぎて、この後の台本をまったく考えていなかった私は、さて、なんて切り出すべきか、と思い、ゾムの顔を改めて見た。
「……嘘やん」
ちなみにこれはゾムの口から漏れ出た言葉だった。
ゾムの顔は真っ赤だった。これ以上ないくらい真っ赤だった。リンゴとかトマトとかで表現しても違和感がないくらい赤かった。え、本当に何事？
「えっ、え……？」
ゾムのことが心配でゾムのことをじっと見つめる。彼は、尚更わたわたと何かに慌てている。ナースコールを押したほうがいいのだろうか。
「あ、あの……」
「は、はいっ！」
「ナースコール、押したほうがいいですか……？」
「あっ！えっ、いや、大丈夫です！」
敬語のゾムって、新鮮でちょっと面白いしかわいいな。なんてことは、彼からしてみれば初対面の相手から言われても気持ちの良いことではないだろう。私は余計なことを口走る前にそっと口を閉じた。
そこまで長い沈黙は続かず、やがてゾムは意を決したように、赤い頬のまま私をじっと見た。
「あ、あの！お名前は？」
「えっと、AAです」
Aさん、と口の中で私の名前を転がすゾム。さん付けはくすぐったいな、と現実逃避のように考える。
「A、さん」
「……はい」
「あ、あなたは、俺の、なんですか……？」
ああ、ついにきてしまった。
私は乾く口と震える手を無視して、言葉を紡いだ。
「私は、あなたの恋人です」
「……う、嘘やろ……？そんな夢みたいなことある……？」
ゾムの顔が、一瞬で綻んだ。
先程までの慌てっぷりはなんだったのかと思うほどだ。
彼は私の手をゆるく繋ぎ、少し興奮気味に喋った。私はどんな表情をすればいいのかわからなかったが、とりあえず悲痛そうな顔はしなくてすみそうだ。
「か、かわええ……。ま、まじで、俺の彼女……？」
「……はい」
「え、め、めっちゃ、タイプなんやけど……！」
それからも赤い顔と嬉しそうな笑顔のまま私に話しかけるゾムを見て、そういえば大先生あたりから、ゾムは私に一目惚れしたとかなんとかっていう話を聞いたなあ、と今更ながら思い出した。
まじかあ。まさかの展開だ。
どうやら私は失恋しなくてもいいのかもしれない。
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じばくとっこうたい - エストが出来るのであれば、出夢ちゃんみたいなヤンデレshaさんが読みたいです。よろしくお願いします) (2021年4月19日 21時) (
レス) id: 05f946baf6 (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - なでこちゃん！！！！！私の推しで、口調とか雰囲気がすごく再現されていてびっくりしました。前作の方でも黒猫ちゃんが出てきてめちゃくちゃ興奮いたしました←文章もすっごく素敵で、他の作品も読ませていただきました。これからも応援させていただきます。(もしリク (2021年4月19日 20時) (レス) id: 05f946baf6 (このIDを非表示/違反報告)
1 - 凄いグッサリきました！リクエストに応えていただきありがとうございます。現実が見えてるけど止めないタイプのメンヘラっていいですよね。 (2020年12月17日 0時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
1 - それと、リクエストを1つ。個人的に、utさん、sypさんのメンヘラが好きで、どちらか書いていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。 (2020年10月22日 21時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
1 - 私に凄く刺さるお話ばかりで、とても楽しませて頂いています。やっぱり、メンヘラやヤンデレっていいですよね。これからも応援しています。 (2020年10月22日 21時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
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