厳選厨が通ります６【カロス編】

余韻 ページ45

ーーー


ーー


ー


＿「こんなところにいたのか」

『…！ヒュウ』

シュートスタジアムの、フィールドの真ん中。観客達もみんな帰ったというのに…未だ熱気に包まれているようだ。余韻に浸りながらぼんやりと景色を眺める

ポケモンワールドチャンピオンシップスは、サトシの優勝で幕を閉じた。決勝の舞台を間近で見ていたが…どちらも引けを取らない良い勝負だった。ラストのピカチュウとリザードンのバトルは、今までのありったけの思いを全部ぶつけ合ったようで……見ているだけで涙が出た。

サトシは、これで世界一強いトレーナーとして証明された訳だ。友人として誇らしく思う

……だけど、


『……なんか、私も全力で戦ったんだから…悔しい訳無いのにさ。
優勝したかったなぁ……って』


暗くなり始めた空を見上げながら独り言のように呟いた。そんな声を拾ったヒュウは、私の隣に歩み寄る。


「……また、出ればいいじゃねぇか。俺もキバナさんにリベンジして、マスタークラスになりてぇし」

『…そうだね』

なんなら、レッドとグリーンさんはバトルツリーの方が忙しくて参加してないらしい。ミクリさんもコンテストに付きっきりって……次は皆で参加したいな

始まってみれば、あっという間の大会だった。記憶に残る名勝負ばかりで、きっとこのチャンピオンシップスは語り継がれていくんだろう


「…お前は、これからどうするんだ？」

『そうねぇ……マノンちゃんとの約束を果たさなきゃだし、調査を手伝って欲しいって言われたし、バトルタワーやバトルツリーに呼ばれてるし…あと、ポケモンGメンにポケウッドで共演と…』

「ははっ、大忙しだな」


控え室に帰った瞬間、全員に声をかけられたもんな。大学時代のサークル勧誘を思い出した。勢いに負けて頷いてしまったが故、全地方を回らなきゃいけない羽目に。


「……段々とお前が遠い存在になるな」

ポツリ、とヒュウが零した言葉を聞き逃さなかった。


『やだなぁ！そんな寂しいこと言わないでよ！
私が例えポケウッドの名女優になっても、アベニューの社長になっても、チャンピオンになっても！私は私！

……だから、ヒュウもずっと傍にいてよ』

「……あぁ！もちろんだぜ！」


今にも泣きそうな顔で、でも声は嬉しそうだった。

私とヒュウは、ただの幼馴染って訳じゃない。お互いに支え合って生きてきた。ヒュウに会うために時空を超えて帰ってきた。

……私にとってヒュウは、隣にいなきゃいけない存在なんだ。


「……さて、帰ろうぜ！ヒオウギに！」

『…うん！』


昔みたいに手を繋いで、幸せそうに笑いながら。会場の出口へと向かう

打ち上げ→←この世界が

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す