行ってきます ページ32
会場の音も観客の声も、全部が全部聞こえない。辺りはとても静かなように思えた。私の肩に顔を埋め小さく嗚咽を漏らしながら泣いているヒュウを、ただ見守っていた
_「続いては第3試合!シンオウチャンピオン・シロナ選手対イッシュの英雄A選手のバトルが幕を開けます!!」
『おおっと、呼ばれた……そろそろ行かなきゃ』
この時間がもっと続けばいいのにね……名残惜しそうにヒュウを抱きしめ返す。両頬に手を添えて包み込むとヒュウと目線を合わせる
『……ヒュウ。私のバトルを見てて』
「…おう」
『……話したいこと、伝えたいこと。いっぱいあるんだ。だから絶対戻ってくる。約束するよ
……だから、行ってきます!』
ゆっくりと、両手を離す。未だ呆然とどこかを見つめるヒュウ。やれやれたるんでるな。ここは1発決めてやるか
……そっと近づいては、頬に触れるだけのキスを落とす。微かなリップ音に反応したのか急に体を仰け反らせパクパクと口を動かしていた。水から上がったコイキングみたい
『…じゃあまたね!』
「あっ…おい!!」
火照る顔をパタパタと仰ぎながら、バトルコートの入口へと急いだ。
・
・
「……なぁ、アラン」
「…いや。なんか悪い。俺はこの場にいなかった事にしてくれ」
「……あ、そうじゃなくてさ。今気づいたんだけどよ………
俺、あいつのポケモン預かったままなんだが。どうやってバトルするつもりなんだ?」
ーーー
ーー
ー
_「それでは!ショウ選手改めイッシュの英雄!A選手の入場です!!」
会場から溢れんばかりの熱気に、気持ちが高鳴ってくる。このスタジアム独特の雰囲気はいつまで経っても慣れないものだ。
……だけど、自分を信じて。後は楽しむだけ。
1歩ずつ、1歩ずつ会場のフィールドを目指す。お面を付けず素顔を晒したままの状態で場内を歩いていると……どこからか声が聞こえてくる
_「英雄ー!!!」
_「世界を救ってくれてありがとうー!!」
_「イッシュの誇りだあ!!!」
A、Aと観客の声が1つになったように。この世界で名前を呼ばれる度に、私はここで生きているんだと実感が湧く。
…昔はこの歓声すらも苦手だったけど……今はもう何も怖くない。不安もプレッシャーも全部押しのけて…私は強くなれた。
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ひな(プロフ) - 改めてシリーズ作品を全て読ませて頂きました...ポケモンの素晴らしさっていうのがちょこぴーさんの作品では何にとっても何に代えたって伝わるんです。いつの時代でも胸が高鳴ってどうしようもないくらい好きだって言えるような作品です😭 長文失礼しました! (2月19日 1時) (レス) id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - ここまで書き続けてくださってありがとうございました!!!番外編も拝見させていただきますね!!!大好きです!!!😌😌❤️❤️ (2月18日 23時) (レス) id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!!!こんなに遅くなってしまってすごく申し訳ないです、引退までの時間は短くなってしまいましたがそれまでは楽しんで欲しいです...😌😌 大好きな作品か終わってしまったのは悲しいけど完結はやっぱりおめでたい事なので... (2月18日 23時) (レス) @page50 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
もるる - 完結おめでとうございます!1年ほど占ツクから離れてたのですが不意にこの作品が読みたくなって帰ってきました。やはり続きが沢山あって狂喜乱舞しました(笑)改めて最初から読み始め、最後まで楽しませていただきました。これからも密かに応援させていただきます。 (1月30日 19時) (レス) @page50 id: c69fdbd3cf (このIDを非表示/違反報告)
チョコ&ピーナッツ(プロフ) - 柚葉さん» 柚葉さぁぁぁん!!!こちらこそ!!!本当にありがとうございました!!!素敵なイラストも沢山いただけ本当に嬉しいです…!この作品を通して柚葉さんに出会え、私こそとても楽しかったです!!ありがとう!!!!! (1月20日 16時) (レス) id: 827ada299b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チョコ&ピーナッツ | 作成日時:2023年12月17日 18時