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「本当に?」
「——!」
何もない暗闇の中、誰かの声がする。
「……誰?」
「あ、聞こえたんだね。ボクの声」
「あなたは……?」
「ボクの名前はシエラ。キミの魂に干渉する者さ」
「たま、しい?」
「そう。今のキミはただの魂。いずれは消えていく運命」
消える。
その一言に思わず反応する。
といっても、体を動かしている感覚はない。
「ねえ。もし今、この瞬間、変わるための手段があるとしたら……キミは変わりたい?」
「変わりたい!!」
真意をつくその問いかけに、即座に答えが出る。
「早いね。もう少し迷うのかと思ってた」
「もう、後悔したくない」
「後戻りはできないよ?」
「それでも構わない!!」
「…にしし。気に入った! ボクと契約しよう!」
「……ん? 契約って何!?」
「『汝、その魂を悪魔・シエラに捧げよ。
さすれば奇跡は眼前に!』」
大きく視界が広がる。思わず目をつむった。少しして、キラキラと星が輝く夜空が広がる。……夜空?
その星々は、前方の黒い渦の中にあった。何かがこちらに向かってきている。ずるり、蛹から孵る蝶のように。
「やあ、初めまして!」
——それは明らかに人じゃなかった。
くりくりしたかわいい目の奥には、形を成さない何かが映っていて。コロコロと笑いながら、少女のような誰かが優しく私を撫でる。そして、金色と深い青の瞳がじっとこちらを見ていて。
「共に天使を殲滅しようじゃないか!」
どういう事、と問いかけるより前に、星の輝く翼があたりを包み込み、闇の中へと吸い込まれていく。
また、私の意識はどこかへ消えていく。
遠く、遠くへと落ちていって。
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