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「未練っていうか……」

ぽつりと、森永くんが呟く。
ガーナくんも森永くんの顔をじっと見ている。

「……後悔ばっかりしてるような気がして、もう一度チャンスがあるならって思っちまったんだ」
「んに……」

後悔。そう言って、森永くんは膝の上に転がるガーナくんをなでていた。もう耳はぐるぐるしていないようで、まるで本物のネコちゃんみたいに喉を鳴らしている。ネコって本当に喉からあの音が出るんだ。

「奥宮さんは?」
「えっ……わ、私? え、っと……」

答えられずにいると、突然教卓にいたシエラちゃんが飛び降りた。

「彼女はまだ仮契約のままだ。君たちのように、本気で天使を殺す気はまだないさ」
「へ〜……でも生き返らせたってことはさぁ、強制的に次の契約もするんでしょ?」

コツ、と小さな足音が教室に反響する。
失礼だね、とシエラは少し不機嫌そうに呟く。

「この契約をするかどうかは、彼女の意志を聞いてからにしないと」

契約とはそういうものだろう? 笑みを浮かべ、シエラはゼットとガーナに視線を向ける。ガーナくんはただ瞳孔を見開き、シエラちゃんを見つめていて。ゼットさんは「悪趣味〜」とニヤニヤ笑い返していた。
多分、そこの二人もわかっているのだろう。生き返りの契約を交わした以上、天使と戦う運命からは逃れられないこと。私に、天使を殺すなんて明確な意志などないこと。それでも、シエラちゃんが絶対に契約すると確信していること。

「ねえ、カナデちゃん。キミはどうしたい?」

目の前に、シエラちゃんの顔が広がる。
いつまでも答えないわけにもいかなくて、私は少し考えてから、一つだけ気がかりなことを思い出した。

「契約は、したい」
「それなら」
「でも、その前に一つだけいいかな」

全員が私に視線を向ける。



「――自分の家に、帰りたい」



_____________

第一章 獣の天使→←|



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設定タグ:終末戦記   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:元素 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年8月6日 23時

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