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「未練っていうか……」
ぽつりと、森永くんが呟く。
ガーナくんも森永くんの顔をじっと見ている。
「……後悔ばっかりしてるような気がして、もう一度チャンスがあるならって思っちまったんだ」
「んに……」
後悔。そう言って、森永くんは膝の上に転がるガーナくんをなでていた。もう耳はぐるぐるしていないようで、まるで本物のネコちゃんみたいに喉を鳴らしている。ネコって本当に喉からあの音が出るんだ。
「奥宮さんは?」
「えっ……わ、私? え、っと……」
答えられずにいると、突然教卓にいたシエラちゃんが飛び降りた。
「彼女はまだ仮契約のままだ。君たちのように、本気で天使を殺す気はまだないさ」
「へ〜……でも生き返らせたってことはさぁ、強制的に次の契約もするんでしょ?」
コツ、と小さな足音が教室に反響する。
失礼だね、とシエラは少し不機嫌そうに呟く。
「この契約をするかどうかは、彼女の意志を聞いてからにしないと」
契約とはそういうものだろう? 笑みを浮かべ、シエラはゼットとガーナに視線を向ける。ガーナくんはただ瞳孔を見開き、シエラちゃんを見つめていて。ゼットさんは「悪趣味〜」とニヤニヤ笑い返していた。
多分、そこの二人もわかっているのだろう。生き返りの契約を交わした以上、天使と戦う運命からは逃れられないこと。私に、天使を殺すなんて明確な意志などないこと。それでも、シエラちゃんが絶対に契約すると確信していること。
「ねえ、カナデちゃん。キミはどうしたい?」
目の前に、シエラちゃんの顔が広がる。
いつまでも答えないわけにもいかなくて、私は少し考えてから、一つだけ気がかりなことを思い出した。
「契約は、したい」
「それなら」
「でも、その前に一つだけいいかな」
全員が私に視線を向ける。
「――自分の家に、帰りたい」
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