No.008 追憶 �� ページ8
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「大丈夫だ」
俺は自分にも言い聞かせるようにして何度も震える声で大丈夫だと呟きながら、Aを強く抱きしめ続けた
いま思えば俺も男だったのだから、その抱きしめるという行為自体がAに怖がられる可能性だってあったのに、Aは俺のことをちゃんと認識していて、助けを求めるように抱きついていた
そうやって冬でもなかったのに冷え切っていたAの身体を撫で続けて何分経ったのか、表情を失っていた綺麗な瞳から涙がこぼれて、止まらなくなった
その時すでに、綺麗だった瞳は真っ暗になっていた
何度も何度も拭っても拭っても止まらない涙に、俺も困り果てて、結局そのまま抱きしめて撫でることしかできなくて、サブとバラが帰ってくるまでずっとそうしていた
俺がいたことがAの慰めになったのかは、いまでも自信がない
夜中になってサブとバラが帰ってきて初めて、Aは俺たちと会話する余裕が出てきたようで、ところどころ切れて血が出て紫色になって震えている小さな口から、俺の予想が全て当たっていたことを聞いた
俺の予想はよく当たる、サブにもそう言われていたし自覚もあったが、今回ほど外れていて欲しいと思ったことはなかった
Aはもちろんショックだっただろうが、俺もサブもバラもまた、ひどくショックを受けた
捨て子としてこの塵溜めのような場所に生まれたことだけでなく、自分の本意でない窃盗によって食い繋がなければならないだけでなく、Aにまだこんな惨い経験をさせるのかと、俺はその時生まれて初めて、神を呪った
この世に神なんていないのだとわかった
金持ちのために動く世界がクソみたいなものだと、わかっていたのに期待していた俺が愚かだったと理解した
そしてAは、自身の念能力を身につけた
自分の尊厳を傷つけた者を絶対に殺すという強い意志から発現した能力だったから、俺たちの中でいちばん強いなんてことになったのだ
襲われた日からAは高熱を出して寝込んでしまい、念能力について気づいたのはずいぶん後のことだったが、念の強さに応じてもちろん制約も強く、後でちゃんと4人で確認した
結局、その能力はその時の犯人に使われることはなかった
俺たちが、あんなに犯罪を嫌っていたAに、人殺しをさせることを拒んだのだ
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね！ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです！ (2020年9月28日 10時) (
レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです！！！！ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます！改めて完結お疲れ様です！ (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライ | 作成日時：2020年9月25日 10時
