No.007 追憶 �� ページ7
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その図書館は俺たちみたいな家のない汚い子どもを拒否することなく受け入れてくれるところで、俺たちと出会ってからのAの、いちばんのお気に入りの場所だった
図書館から帰ってくると、その日読んだ小説の登場人物について自分が考えたことを話したり、得た知識を生かしていろんなことを俺たちに教えてくれたりと、毎日楽しそうに目を輝かせていたものだ
それなのにその日、図書館から帰ってきたAは、見たこともないような冷たい目をしていた
いつもころころと変わる子どもらしい無邪気な顔からは表情がごっそりと抜け落ち、カタカタと小刻みに震える手で俺の手を掴んでいるのにその目に俺は写っていなくて、初めてこいつを怖いと思った
俺が何を聞いてもAの返事は上の空で、俺の名前と殺すという言葉をぶつぶつと呟くばかりで、困り果てた俺がそれからわかったのは、俺を殺すと言っているわけではないということだけだった
とても普通ではない状態のAを前に、落ち着いて考えてみて、すぐにピンときた
ここ数ヶ月、住処の付近で横行していた強 姦魔のことだ
身寄りのないホームレスの女から、裕福な貴族の女まで、手当たり次第に手を出しているらしいというのに、いまだ手がかりすらないという謎の犯罪者である
パクった新聞でその事件のことは知っていたのに、俺はその頃まだAのことをガキだと思っていたし、基本情報として女の子であるとは理解していたけど、まさか襲われる対象であるなんて思わなくて、注意しろなんてひとことも言わなかったし、Aがひとりで行動したら危ないと考えることもなかったから、いつものようにひとりで図書館に行こうとするAをその日、俺は普通に送り出してしまった
注意して見てみれば、いつも着ている古いAの服は異様な形にところどころ破れていたし、足の付け根あたりは血だけではないなにかでぐちゃぐちゃに塗れていた
襲われたのだとピンときたはいいが、どうしたらいいのかわからなくて、放心状態で殺すと呟き続けているAを、俺はただ抱きしめてやることしかできなかった
どうしたとか、なにがあったとか、何度聞いても言わないところを見ると、よっぽど詳細は言いたくないのだろう
怖いとか痛いとか気持ち悪いとかではなく、殺すという言葉しか言わなかったのが、もうAの精神が少しばかり狂ってしまっていた証拠だったのだと、いまは思う
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね！ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです！ (2020年9月28日 10時) (
レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです！！！！ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます！改めて完結お疲れ様です！ (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライ | 作成日時：2020年9月25日 10時
