No.045 センチメンタル ページ45
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そして草むらに転がされている俺たちのもとに走り寄ってくると、Aは勢いそのままに飛びついてきた
「ゲンスルー！」
「そんな何回も呼ばねえでも聞こえてる」
「ゲンスルー！生きてるね」
号泣に近いくらいぼろぼろに泣いているAの涙を拭ってやりたいのに、頭を撫でてやりたいのに、抱きしめて背中をさすってやりたいのに、俺の手は拘束されたままで動かせない
走ることなんてできないはずの義足で、それでも急いで俺たちのもとへと駆け寄ってきてくれたことが嬉しかった
俺に抱きついてしゃくりあげているAの左足が、いつもとは違う変な方向に曲がっているのが見えて、いま無理をして走ってきたせいで少し壊れてしまったのではないかと心配になる
「いま私たちの周りにいる人間、何かしようとするならすぐ殺す。殺されたくなかったらすぐ消えて」
俺にひとつキスをして、服の裾をぎゅっと握りながら、こっちまで息を飲むような冷徹さで周りの奴らに向かって言い放ったAに、様子を伺っていた雑魚どもは散り散りになった
いまの念を肌で感じれば、Aが俺たちの中でいちばん強いことくらいはわかったのだろう
「ゲン」
「なんだ」
「ゲン」
「聞こえてる」
「ゲン、生きてるね。サブもバラも、生きてるね」
「俺たちはついでか」
「そんなことない」
「お前は無事か」
「サブ、心配ありがとう。とっても無傷」
「ならよかった。これほどいてくれ」
「もちろん、そのために飛んで来たんだから」
「おい、A」
俺たちが生きていることに心底安堵して、俺の手の拘束を外そうと躍起になっている、目の前の少女の名前を呼ぶ
「なあに？」
「幻滅したか」
青く高い空をバックに、Aが俺を覗き込むその目が、とてつもなく透き通っていて、真っ暗で、綺麗だ
俺の気力の無い質問に、Aはぴたりと動きを止めてじっと俺の目を見つめると、怒ったようにきゅっと眉を寄せた
「幻滅しないよ」
「そうか」
「幻滅しないよ」
「よかったよ」
「生きててよかったとしか、思ってないよ」
「そうか」
「ゲンってバカだね、ほんと」
「そうかもな」
「あれ、もしかして珍しくセンチメンタルなの？」
俺の腕の拘束を解いて、あとは自分でやれとばかりにサブの拘束にとりかかったAを、後ろから抱きしめた
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね！ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです！ (2020年9月28日 10時) (
レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです！！！！ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます！改めて完結お疲れ様です！ (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライ | 作成日時：2020年9月25日 10時
