No.031 守れない約束 ページ31
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「サブ、バラ、頼んだぞ」
「ああ。任せろ」
「お前はさっさとカード集めてこい」
3人に手を振って、まだ泣きそうな顔をしているAの頭を撫でて、最後にもう一度キスをしてやって、そうして結局、俺の方があっちに戻るのが嫌になってしまう
もう慣れた手つきでAのジャケットを少しあけて、白い鎖骨にキスマークをつける
そのあとミニスカートからのびる足にもつけて、Aが俺のスカーフを解いて胸元につけて、儀式みたいな作業は終わりだ
会えるたびに互いにキスマークをつけるのは、すでにAとのあいだで恒例化していた
「また約束破らないでね」
「お前との約束を守れねえクズで悪いな」
「破らないって言ってよ」
「さらに守れない約束はできねえ」
「ゲンのバカ」
キスマークは長くても10日くらいで消えてしまう
いちばんはやくて1ヶ月後にしか会えない俺たちが、これが消える前にまた会うことなんて最初から叶わないと知っていたのに、俺は最初の時に「この痕が消えるまでにまた会いに来る」なんてことを約束しちまって、それを毎回破り続けているのだ
俺はいままで、Aとの約束を破ったことがなかった
嘘もついたことがない
だから初めてキスマークが消えても会いに行けず約束を破ったとき、Aは俺に捨てられたと思ったのか、サブとバラの手に負えないほどふさぎこんでしまったらしい
俺がいないあいだに暴れなかっただけまだマシだが、そのあと俺が会いに行ったら、Aはキスマークじゃダメだと思ったのか俺の肩に思いっきり噛み付いて、うそみたいにドバドバ血が出て、ちょっとした騒ぎになった
まあ、騒ぎと言っても俺は少し痛いくらいでかわいいもんだと思っていたから、サブとバラがその血に驚いて騒いだだけだった
その歯形だけが、いまも消えていない
もうAもキスマークが消える前にまた会えるわけがないとわかっているはずなのに、毎回ちゃんと期待して、約束破らないでなんて言ってくるのだから意地が悪い
誤魔化すように髪を撫でてやっても、Aにはそれが誤魔化しだということもバレているようで、寂しそうな表情が笑顔に変わることはなかった
「無理すんなよ」
「ゲンもね、頑張りすぎないで」
「頑張りすぎないと死んじまうぞ」
「死んだらダメに決まってる」
「わかってるよ。じゃあな」
呪文カードを使うことなく寝床から遠ざかる俺を見つめるAの目は、まだ真っ暗なままだ
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね！ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです！ (2020年9月28日 10時) (
レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです！！！！ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます！改めて完結お疲れ様です！ (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライ | 作成日時：2020年9月25日 10時
