No.022 束の間の癒し ページ22
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Aたちがゲームに入って半年近く経った頃、俺はやっと単独行動の合間を縫って無理やり自由時間を作り出すことに成功した
漸く磁力の呪文カードでAのところを訪ねられる
そのためにも、最初に会った事実を作っておくのは大事なことだったのだ
柄にもなく楽しみにしながら磁力で飛んだ先は、どこかの山奥らしく緑ばかりで、殺戮ゲームの中とは思えないくらいずいぶんと静かで長閑なところだった
Aは眠っていたようで、その隣に寝転んでいたサブとバラが、突如現れた俺を驚いた顔をして見つめていた
「こんなところに居たのか」
「うわ、久しぶりだな、ゲン」
「元気そうだな」
「まあ俺たちはな。ゲンは全然元気そうじゃねえが、大丈夫か」
「ああ。Aは寝てるのか」
「起こすか?」
「まあ顔を見られれば良かったが……」
「本当にそれだけで満足かよ」
「起こせよ!A、ゲンが来るの待ってたんだから」
「……そうだな。できれば声を聞きたいし目を見たい」
「なら、ゲンがキスしたら起きるぜ」
「キスで起きるか?」
「童話のお姫さまみてーにな」
ニヤニヤと楽しそうなサブとバラに急かされて、なぜか勝手に俺のジャケットを着たまま眠っているらしいAのそばにおそるおそる膝をつく
そのまま顔を覗き込んで、硬く閉じられた小さな唇にそっとキスを落とした
「ん……?」
「起きたか」
「え?」
「久しぶりだな、A」
「ゲンスルー!」
最初は寝ぼけたように目を開いたAが、すぐにまん丸に目を見開くと、そのままの勢いで俺に飛びついてきた
思いっきり抱きしめてくるAの髪をさらさらと撫でながら何度かキスをしてやると、嬉しそうに微笑む
「起こして悪いな」
「ううん!起こさなかったら嫌いになってた」
「なら起こしてよかったな」
「うん。ゲン、会いたかった!」
「俺も会いたかったよ」
「ほんと?」
「ああ。いい子にしてたか?」
「してたよ!」
「俺がいなくて寂しかったか?」
「もう、すっごい寂しかったよ。ゲン、来るの遅いよ」
「悪い。忙しくてな」
「もう全員殺す?」
「殺さねえよ。まだまだ働いてもらわねえと」
「なら、また戻っちゃうの?」
「ああ。ここにいられるのは数十分だな」
そう言うと、Aは見るからに寂しそうな顔になる
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね!ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです! (2020年9月28日 10時) (レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです!!!!ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます!改めて完結お疲れ様です! (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ライ | 作成日時:2020年9月25日 10時