No.012 ニッケスからの誘い ページ12
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「新人か?」
後ろから声をかけられた瞬間に、こいつがゲンスルーから聞いていたニッケスだとわかった
「俺たちと組まないか」
「組む?」
「ああ。一緒にゲームクリアを目指そう」
「組む必要性をあまり感じないが」
「向こうで仲間が待ってる。話だけでも聞いてほしい」
「なぜだ?」
バラが警戒心強めな感じで話しはじめると、Aはさらにフードを目深にかぶって俺の後ろに隠れた
そんなに敵意をあらわにしていたらこのニッケスという男もさすがに気付いてしまうのではないかとヒヤヒヤしながら、俺はAの頭をそっと撫で続ける
「初めて来たばかりの君らは、話を聞くだけでも有意義だと思うがね」
「初めてだってわかるのか」
「ああ。ブック」
「なんだ?」
「ほら、いまお前らがバインダーを出さないからだ」
「なるほどな……いいだろう。話だけは聞いてやる」
「そうか。なら付いてきてくれ」
ニッケスに付いてこいと言われるがまま、俺とバラが歩き出して、後ろからAに手を引っ張られた
「どうした」
「なにあいつ。殺す?」
「殺さねえよ」
「なんでよ」
「ゲンの言ってた仲間って奴だからだよ」
「なんか嫌な感じするよ?」
「いいから。Aは何も言わなくていいから、な?」
「でも失礼だよ。殺した方がいいと思う」
「よくない」
「でも」
「ゲンの計画を台無しにするのか?」
「……しない。ゲン頑張ってるもん」
「だろ?いまからゲンに会うだろうが、他人のフリな」
「いまから?」
「ああ。話さなくていいから、知らないフリ。約束」
Aに向かって小声で小指を差し出すと、Aも細い小指をそれに絡める
向こうでは、バラがニッケスの意識を逸らしてくれていた
「約束」
「ああ。ゲンと約束しただろ?」
「わかってる」
「俺たちが話すから、お前は何も話さなくていい」
「不安だから目合わせないようにしとく」
「それがいいな」
フードをぐいぐい引っ張ってさらに目を隠そうとするのをじっと見ながら、そのフードの上から頭を撫でてやる
ここに連れてきてよかったのかと、少し思ってしまう
ゲンスルーも俺たちもいない現実世界にいたほうがAの心が休まるのかはわからないが、ここにいたほうが危ない思いや怖い思いをする可能性が高い気がした
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね!ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです! (2020年9月28日 10時) (レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです!!!!ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます!改めて完結お疲れ様です! (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ライ | 作成日時:2020年9月25日 10時