５５ ページ9
私がまた迷わないように廊下で待っている、と樹が言った。
急がなくていいとは言われたけど、人を待たせてのんびり長湯なんてできるはずもなく。
「………樹…？」
なるべく急いで出てきてみれば、壁にもたれて座った樹が、私を見上げて小さく笑った。
「早かったね。もっとゆっくり入ってきてもよかったのに。」
「え、だって待ってもらってるのに。悪いよ。」
「そんなこと気にしなくていーの。」
行こ、と差し出された左手に右手を重ねる。
部屋までゆっくり歩きながら、同じようなテンポでゆっくり話した。
「……樹。」
「んー？」
「多分、私、お風呂と自分の部屋の往復、一生一人でできない気がする。」
「んは、マジ？」
「うん。もともと方向音痴だし。外でもすぐに迷うのに、これは無理ゲー。」
「そっかー。でも、大丈夫。」
「なんで？」
「………俺がいるじゃん。」
ね、と言って、空いている方の手で私の頭を撫でる樹。
すると
「え、髪の毛全然乾いてねーじゃん！」
「……あ、うん、ドライヤーないし、ざっくり拭いてから部屋でゆっくりタオルドライしようかな、って…。」
「急いで戻るよ。」
さっきまでののんびりペースとは打って変わって、速足で歩き始める樹。
でも、つながれた手が離れることはなくて。
私の中での樹に対する『好き』が、どんどん増していくのは意識しなくてもわかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 419人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月華(プロフ) - 凪さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけて何よりです！引越し先にも是非遊びにいらして下さい(* 'ᵕ' )☆ (2022年10月16日 20時) (
レス) id: 86be01ea37 (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - この作品大好きで、いつも更新楽しみにしてます！！ (2022年10月16日 9時) (レス) id: 789ab475c3 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - おむらいすだいふくさん» こちらではなかなかイチャイチャ要素を持ち込みにくいので、別作品を書き始めてしまいました(笑)こちらでも書けるときには頑張って書きますね。 (2022年10月12日 0時) (レス) id: 1c32e2fa67 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいすだいふく(プロフ) - 月華さん» 更新ありがとうございます！個人的に樹くんとのイチャイチャがもっと見てみたいです！笑 (2022年10月11日 7時) (レス) id: 5efa7bbe3f (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - おむらいすだいふくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて良かったです。お話はまだまだ続きそうです。ぜひ楽しんでいってください。ありがとうございます！ (2022年10月9日 19時) (レス) id: 1c32e2fa67 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月華
| 作成日時：2022年9月23日 22時
