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この部屋使って、と開けられた部屋は、こぢんまりとして落ち着いた雰囲気の
部屋だった。
「俺の部屋は、こっちにあるから。」
私の正面に立って、廊下の反対側を親指で指しながら教えてくれた。
「わかりました。」
「…もう、寝る？」
「えと……まだ寝ません、あの、読書の続きを、」
「……A。」
「はい、」
少し気まずそうにした樹さんが、うつむいて私の右手の指先を取って呟く。
「…俺が寝るまで…そばにいれる？」
「え、」
「……昨夜……よく眠れたから、」
大の男がこんなこと言うのもアレなんだけど、と、変わらず気まずそうに視線を合わせない樹さん。
「……一緒に、いられます、」
「……いーの？」
樹さんが顔を上げて、私と視線を合わせる。
「…はい。」
表情はあまり変わらないけれど、樹さんがどういう思いなのかはわかる。
「……俺、こんなんだったっけ。」
困ったような、泣きそうな、そんな顔をしながら私のことを抱きしめてくれた。
「……なんか…いいカンジで寝れそうだから……寝る。」
「…はい。」
「本、読んでていいから。」
「まぶしく、ないですか？」
「へーき。この間、ランタンついてたけど爆睡してたし。ソファで。」
「わかりました。」
リビングに置いてあった読みかけの本を取りに行くときも、樹さんは手をつないで
一緒に降りてくれて。
樹さんの部屋に入ると、樹さんらしいキングサイズの大きなベッドが置かれていた。
樹さんはベッドにもぐりこむと、枕の位置をさぐって、ソファに座ってるとき
みたいに自分のとなりをぽんぽん、たたいて合図する。
ほんの少し、戸惑ったけれど、眠そうにとろんとした樹さんの目を見たら
吸い寄せられるようにブランケットを捲って、ヘッドボードを背もたれにして
本を開いた。
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作者名：月華
| 作成日時：2023年3月28日 1時
