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その夜、俺たちはこれからのことを話し合った。
「Aは、これから4年生だよなぁ。」
「そうです。」
「卒業したら、どうすんの?」
就職?進学?と言いながら、ミルクティをひとくち。
「………実は、未定、です。」
「そなの?」
「はい、本当は勉強も研究もしたいんですけど、」
たくさんの人に囲まれていると、疲れる…らしい。
「…人が少なくて興味ありそうななんか少数派的な研究室に入る、とか、できねーの?」
「それも、考えてました、けど、」
「けど?」
言いにくそうな空気を漂わせて、マグカップを両手で持って俯いている。
「A?」
「…はい。」
「なんか…言いにくい?」
「いえ、そういうわけでは、」
「…どした?」
うつむいた顔をのぞきこむと、意を決したように顔を上げて俺を見た。
「あの、樹さんのお家は、この街に、あるじゃないですか、だから、その、」
離れたくないです、と、蚊の鳴くような声で答えて、顔を赤くしながら
また俯く。
「俺も。」
離れたくない、と告げてAの髪を梳く。
初めて左手で触れたAの髪は、細くてさらさらしている。
そのまま、さらさらと零れ落ちる髪を梳いていると、ひとつ思いついた。
少し考えて、それを提案してみることにした。
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作者名:月華 | 作成日時:2023年3月28日 1時