Jupiter

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捕われる……そう思ったとき、ぐんっ、と強く体を引っ張られた。
杏寿郎の体は鬼から離れるように岸へ落ちると、優しい何かに包まれて着地する。

「引き付けてくれてありがとう。他の隊士はちゃんと避難できたよ」

「……A」

いつの間にか追いついていたAによって助け出された杏寿郎。刀を地面について立ち上がろうとするが、それを制すように肩を押されてしまう。

「あとは私に任せて。ここで休んでて」

「何を言っているんだ、相手は下弦の鬼だぞ！もう戦えるのは俺と君しかいない！二人で……」

「杏寿郎。私を信じて」

見つめてくるのは真っ直ぐな、曇りのない瞳だった。

自分とさほど変わらない歳のはずなのに、この状況下でひどく冷静で、確信を持った一言がすんなりと心に沁みた。

「溺れたいやつが増えたか。いいだろう、相手してやる」

休もうとしている人間を待つはずもなく、鬼は大量の水を放った。まるで津波のような水が二人を包もうとしている。

杏寿郎を背に庇うと、Aは印を結んで両手を地面に付けた。

「土遁土流壁(ﾄﾞﾘｭｳﾍｷ)」

突然地面から土の壁が出現し、襲い来る水を防いだ。
水の勢いが収まるとAは壁の上に飛び上がり、川まで走る。

「A！……っ」

それに続こうとした杏寿郎だが、連続で型を繰り出したせいで体が痺れ、土の壁に寄りかかってしまう。顔を顰め、Aの背中を目で追うことしか出来なかった。

「なんだ？……お前、人間のくせに妙な力をつかうな」

「(この鬼は水を使う。さっきの隊士の情報では、水の鞭で捕らえて溺れさせようとしてくる……今のは、ただ水を流しただけ。簡単に土流壁で防げた。きっと水の量が多いほど、鞭のように繊細には操れない)」

「おいおい、避けるだけか？さてはお前も泳げないんだな？そうだろう！？」

鬼の戦い方を分析しながら、水の鞭をひらりひらりと攻撃を避けていく。

水の柱の上に立つ鬼は、なかなかAが捕まらないことに苛立ちを感じ始めていた。次第に攻撃をしかけてくる速度が上がる。

Aは日輪刀の柄を握った。

足を捕らえようとした鞭を、素早い抜刀で断ち切る。

しかしその刀身は通常の刀よりもかなり短く、刀の中でも脇差と呼ばれるものに近かった。

【にんにんコソコソ噂話】

・チャクラの基本性質
チャクラには個性があり、火遁･水遁･雷遁･土遁･風遁が主な性質。その性質を用いた忍術を使うことが出来る。