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「剣心は、もう人斬りじゃねェッッ！ もう人は斬らねえと、決めてんだ……っ！ お前とは違ぁうッ!!!」
オラァッ！ 凄まじい掛け声とともに、信じられない素早さで彫像を振り下ろす。
どごぉんっ!!!
「……！？」
ぶしゅっ！ 攻撃したはずの左之助の両手首から血が吹き出す。人間離れした素早さで、刃衛が刀を振ったのだ。
"左之助！？"
(…………っ!!)
よろめいた左之助を見て、思わず刃衛に斬り掛かる。
逆刃刀でよかった。これでなければ、手元が狂って斬ってしまうかもしれなかった。
「ぬぅん！」
きぃん！
ギィン！ キン！
刀と刀のぶつかり合う、耳障りな音。弾いて、弾かれて、鍔迫り合う。
横薙ぎに斬られそうになるのを飛んで避け、上から斬り掛かる。刃衛はそれを刀で防いで、その勢いのまま押し返す。剣心も押し返された勢いで天井まで飛び、天井を蹴って体重を乗せた重い一撃を見舞う。
"避けて!!"
(っ！)
効いていない。剣の掛け声で距離をとる。
一拍遅れて、剣心の着物の腕の部分がスゥ、と切れた。薄皮一枚持っていかれたが、大した傷ではないだろう。
"大丈夫、剣心！？"
「つまらぬつまらぬ……！ 今のお前は幕末の抜刀斎には遠く及ばぬ!! 人切りが人を斬るのを止めれば、十年間殺さずにいれば、剣気がいかに衰えるか……自分でわかるだろう？」
言いながら刃衛は刀を鞘に収めた。
"なに……？"
戦う気がなくなったのか？ 抜き身の刀が消えた途端に騒がしくなった背後を気にしつつ、剣はまゆをそびやかす。
「一日だけ時間をやろう。それまでに戻っておけ。……昔のお前になぁ」
俺が殺したいのは幕末の抜刀斎だ！ 高笑いして、刃衛は風と共に姿を消した。
「刃衛!!」
左之助が傷をおして窓に駆け寄る。もう、刃衛の姿はどこにも見えなかった。
◆
血の滲んだ腕の包帯を見つつ、剣は嘆息した。
"なんなの、あの人"
「あのやろう、完全にいかれてやがるぜ」
剣に呼応するかのように、左之助も舌打ちをした。
「今度はお前が標的になっちまったじゃねえか」
「……構わんよ。むしろ好都合でござる」
左之助が目をむく。
「お前っ、最初からこうなることを予測して、頼まれごとを引き受けたのか？」
剣心は問いに答えなかった。目を瞑ったまま、独りごちるようにつぶやく。
「確かに、やつの言う通りかもしれぬ……今の拙者では、やつに勝つことはできない……」
"……ちょっと剣心？ 何言ってんの"
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作者名：アオ | 作成日時：2017年3月3日 17時
