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刀剣の歯車達 ページ8

手合わせの音が響く。

美しい音、流れ落ちる汗。

刀工は静かにそれを聞いた。

耳を澄まし、己の全てをその音のために使った。


津原(つはら)はゆっくりと目を開けた。

出来たばかりの刀を鞘に納めた奈倉(なくら)は汗を手の甲で拭った。

片目は包帯で覆われている。


「奈倉、拭い切れてないよ。」


津原は手拭いを奈倉に渡す。

奈倉は嬉しそうにそれを受け取った。


「にしても、やはり良い刀ですね。」

「そう?ありがとう。」

「ええ、これで人を切ったら、さぞ気持ちが良いんでしょうね。」


その言葉に津原は顔を顰めた。

それに気付いた奈倉はフッと笑って言った。


「冗談です。流石に出来ませんよ、師匠の刀で。」

「私が人を切っても良いと認めたのは光の加護を受けたその刀のみ…

流石に奈倉でも許さないから。」


奈倉は鞘に納めた刀剣を津原に返す。

津原はその刀を握って離さない。

まるで、我が子のように抱きしめる。

その姿を奈倉は美しいと思った。

それはもう昔から彼女を見詰め続けているのだからそう思うシーンは何度もあった。

やはりこの姿はそのシーン以上に美しかった。

華奢で細く、しなやかな体。

高すぎず低すぎず、優しい音色の声。

刀剣、そして奈倉自身も含む弟子達への愛情。

全てを守ると決めたのだ。

奈倉は津原の後ろをゆっくりと歩いた。

やっと、手が届くようになった。

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龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» こわっ、てめぇ夜道には気を付けろよこの神文才野郎 (2017年2月9日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 寄越せ。文才寄越せください。 (2017年2月7日 22時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜のお外だいしゅきさん» 減るわやめろ (2017年2月7日 18時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
夜のお外だいしゅき - なぜだ。なぜくれない。いいだろう別に。お前の文才はちょっとやそっとじゃあ減らないだろう (2017年2月5日 21時) (レス) id: 2500df9be3 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜の空気を吸い隊さん» 名前に笑った、そして嫌だ (2017年2月5日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2017年1月31日 16時

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