検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:2,418 hit

手を伸ばして ページ22

「っ…」


時計屋は何故自分が暗い森の中を走っているのか不服だった。

後ろを見ると明らかに人間ではない者が追い掛けてくる。

(何故こうなったんだ…?)


遡ること一時間前、

時計屋は店の前に『CLOSE』という書かれた看板を扉の前に起き私室へと向かった。

私室には今自分を追いかけているバケモノが居てビビって外に逃げてきてしまった。

そして、今に至る。


「ッくそ!どうせあいつ絡みだろう!?面倒事しか持ち込まないな奴も!!」


あいつ、奴。

紛れもなくヒトエの事だ。


「っ、がッ…!?ぅ、え…」


首を絞められる。

(追いつかれてしまったか…)

段々と思考も回らなくなる。


「ット、ェ…!ヒト、エ…!」


(お前の責任だろ、)

そう言おうとすると急に体が苦しくも楽になる。

暖かい手に包まれて浮いていた。


「…君は、本当に遅い。」

「ごめん、大丈夫?時計屋。」


ヒトエは軽く謝りながらゆっくりと時計屋を地面に下ろす。

バケモノはヒトエな姿を見ると豹変したように突っ込んでいく。


「悪いけど、」


ヒトエの手に握られた刀が光る。


「ここで彼と心中する気は無いんだ。」


怒りの感情がチラチラ見えて時計屋は呆れた。

気に引っかかったシルクハットを取って被るとヒトエに一言お礼を言った。

ヒトエは嬉しそうにどういたしまして、と言った。

2人は店へと戻り、紅茶を飲みながら話すことにした。


「まず1つ、君は何者だ?」

「何者、そんなの何十年前から知ってるのさ君。」


ヒトエは不味い紅茶を一口飲んで焼き菓子に手を伸ばした。

時計屋は深入りはせず紅茶を飲んだ。

数秒の静寂が1時間の長さに思える。

優雅に紅茶を飲むヒトエの姿が無性にイラついた。


「店長殿から話は聞いている、君が居なくなったと。」

「そう。」

「見付けたら、連絡を寄越せとも。」

「…それで?君はどうするの?」


ヒトエは乞うような目で時計屋を見る。

時計屋はその目から逃れるように紅茶を飲んだ。

そして、当然と言いたげな声で言った。


「僕は、友人を売る程クズじゃない。」


その言葉を聞いたヒトエは満足そうに、嬉しそうに。

「ありがとう。」と一言言った。

軽く袖で目元を擦ったのを時計屋は見ないふりをしてやった。

廃ビルの思惑→←境界の1歩手前



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

龍巳@キチガイ - 【 】nanashiさん» こわっ、てめぇ夜道には気を付けろよこの神文才野郎 (2017年2月9日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
【 】nanashi(プロフ) - 寄越せ。文才寄越せください。 (2017年2月7日 22時) (レス) id: 1572cb3dd0 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜のお外だいしゅきさん» 減るわやめろ (2017年2月7日 18時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)
夜のお外だいしゅき - なぜだ。なぜくれない。いいだろう別に。お前の文才はちょっとやそっとじゃあ減らないだろう (2017年2月5日 21時) (レス) id: 2500df9be3 (このIDを非表示/違反報告)
龍巳@キチガイ - 夜の空気を吸い隊さん» 名前に笑った、そして嫌だ (2017年2月5日 20時) (レス) id: 3d3a9ea8a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:龍巳@キチガイ | 作者ホームページ:ホームページの追加は禁じます。  
作成日時:2017年1月31日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。