歯車は今、処刑台を彩める。 (ページ19)

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白の歯車ページ19

白い狐が珈琲を差し出すと嬉しそうに女は受け取った。

熱い湯気が立ち上る。

女は珈琲を飲み干すと叫んだ。

日ノ本輝かくこの国に蔓延る『ゴミ共』よ！

我らが陛下の御前に平伏し死ぬが良い！！

白真一(しろさなはじめ)は大隊を進軍させた。

二度と帰って来れない者も居るだろう。

白真は死んだ兵士の葬式に必ず参列している。

それが民に愛されず軍人とその家族に愛される由縁だろう。

「総統、そろそろ。」

「もうそんな時間か？それでは諸君、また会おう。生きて帰れたら。」

手を振って杖を動かし歩き山を降りる。

白狐はその後にピッタリとくっ付いている。

「っ！何者だ！？」

刃を突き立てられ驚いた顔をしたハーティンは歯をむき出して笑った。

(…例の暗殺者か…)

きっと白真を殺しに来たのだろうと刃を持つ手に力が加わる。

「ターゲットは私だろう？」

白真が笑いながら問いかける。

相変わらず独特の笑い方をしたままハーティンが答える。

「いいや、今私にナイフ突き付けてる方。」

「白狐か？それはまた珍しい。」

「総統はそこに居て下さい。」
「分かっている、白狐の邪魔はしないさ。」

肩を竦めて笑う白真を白狐は横目で確認すると刃を真横に薙いだ。

ハーティンが木の上に飛び付いてまた笑う。

「いいよ。」

バッ、と数人が白真に飛び掛る。

(やはり、狙いはこっち…！)

白狐がその数人を蹴散らす。

「あっぶな…」

黒狐がふぅ、と息をつく。

シャルロッテは不満そうに自分が握るナイフを眺めていた。

輪廻の姿が見当たらない。

「あっ、輪廻さん…また単体行動？何してんのあの人。」

「知らないけど、やっぱり強いね。日基の総統補佐…一旦帰った方が…」

「ここで普通帰る！？最後までやろうよ。」

ハーティンが楽しそうに笑う。

仕事中はいつもこうなのだろう。

輪廻の姿は依然見えない。

シャルロッテは些か慎重過ぎにも見える。

「総統、」

「嗚呼殺せ。この国を脅かす者達だ、早急に始末しろ。」

「了解。」

白狐がナイフを握り直す。

雪の上に血が降る。