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「おじいちゃんのこと、知ってるの？」
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『…おじいちゃん、だと？』
慌てて口を手で塞いだけど、もう遅かった。
薬の袋を掴んだ翔が、「逃げるよ！」と
私の手を引くけど私は動けない。
足の裏が床に張り付いたように。
私はその場から一歩も。
和「くっそ！術がかけられてる」
翔「じゃあなんで俺らは動ける⁉」
和「知るか！」
ズシン、ズシンと
奥から地面を揺らす音と共に
巨大な影が私の前に立った。
黄色く光る瞳が私を見下ろす。
太く毛深い腕が私に向かって伸びてくる。
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途端に、周りが、静かになった。
…違う。
周りが止まったんだ。
カズも、翔も、音も、空気も
目の前の妖怪と私以外の全てが止まった。
『お主、名をなんと申す』
伸ばされた手が、私の頭に触れた。
「A、です」
頭から耳に降りてくる。
『お主の祖父の名は』
耳から肩へ
「太郎、です」
肩から、首元へ
『タロウのことを何でも良い、ひとつだけ話せ』
首元から、少し下がったところへ。
「おじいちゃんは…」
触られているところが
少し強く押された。
「凄く」
さらに、強く
「凄く！」
痛いと感じるほど、強く
「……優しい、です」
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パチン、と短い音と一緒に
私に触れていたものは退いていて
和「んあ？」
翔「いま、なにが…」
止まっていた周りも動き出した。
それから、目の前にいたのは
私の胸の高さぐらいの身長の、タヌキ。
『よう来たな、タロウの孫。
患者を全て診終わるまで、部屋で待っておれ』
タヌキさんが手をパンパンと二回叩くと
部屋の入り口とは別の扉が現れた。
『喰うたりせんわ。
大切な友の、大事な奴だからな』
そのままタヌキさんは踵を返して
また、奥の暗いほうへと消えていった。
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作者名：じぇりー x他1人 | 作成日時：2015年3月6日 15時
