17話 シンナキサラ ページ18
その後迷路のように入り組んだ廊下を進み、五人は女将にそれぞれの部屋まで案内してもらい、ミツキは杉元、アシㇼパと同じ部屋になった。
貴『おおーベッドなんて久しぶり！ふかふか！』
アシ「これはすごい、体が跳ねるぞ！」
杉元「こら、アシㇼパさん！峰山！行儀悪いでしょ！めっ！」
二人が楽しそうにキャッキャする様子に、ついオカンのような口調で注意する杉元。
アシㇼパがもう一人増えたような、そんな不思議な感覚に「ふふ…」と彼はほくそ笑んだ。
ガタッ
貴『ん？なんか聞こえたような…』
杉元「なんか変な音がしなかった？」
アシ「…私のお腹だ」
そう言ってアシㇼパは「ぐうぅ…」と鳴く腹をしょんぼりした顔で見つめる。
貴『下の階に降りて、外のお店でも探しますか？』
杉元「そうするか」
そう言って三人が部屋を出て階段を降りると、キロランケが一人でいる様子だった。
貴『あれ、白石さんはどうしたんですか？』
キロ「あいつなら、女将を口説くとか言って出ていったっきりだ。
…なあ峰山、あいつのことは考え直したほうがいい。もう少し太って、良い旦那を探すんだ」
貴『はあ…。………？！』
そんな話をしていると、見慣れた大男が階段を降りてくるのが見えてしまい、ミツキはガチッと固まってしまった。
牛山だ。
アシ「…シンナキサラ」
キロ「！シンナキサラ」
牛山「なに？」
「なんでこんなところにいるんですか？！」と言いたげな表情を浮かべて牛山をガン見するミツキに、牛山はチラリとだけ目を合わせ何も言わない。
杉元「それは柔道耳ってやつだ。あんた相当やってたね？俺は体質なのか、そんな耳にはならなかったよ」
牛山「ほう、心得があるのかね？」
そう言って二人は握手をすると、何故だかただならぬ雰囲気に変わるのを感じた。
牛山「…このままでは殺し合いになる。こんなに強い奴ははじめてだぜ」
それから二人は少しの間、謎の熱気のようなオーラを醸し出しながら掴み合っていたが、牛山の一言で場は平和に収まった。
牛山「気に入った、奢ってやる。飲みに行こう」
それから牛山の提案により、水風亭という飲食店へ行こうという話になり、ホテルを出るため出入り口へ向かう。
貴『…』
アシ「？どうした峰山、来ないのか？」
ミツキは皆の後ろをついて歩みを進めていたが、ピタリと止まって振り返った。
貴『…やっぱり私、白石さん探して連れて行きます』
アシ「そうか？」
杉元「あんな奴ほっときゃいいのに」
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年2月25日 22時
