14話 目指す場所 ページ15
杉元「谷垣、ちょっと…」
杉元は谷垣に声をかけ、窓に来いと合図する。
杉元「こっそり外にいるアイヌの男を確認してくれ。外で馬の世話してるやつだ」
貴『…』
用心深い人なんだな…
ニシン漁場前で初めて会った時も、凄い睨みを定期的に感じさせられていた。
きっとまだ自分も警戒されているのだろう。
谷垣「どこだ？いないぞ？」
キロ「そのトンコリ……懐かしい。アシㇼパの父親が樺太で手に入れたものだ……おや？おまえは…」
「…！！」
いつの間に中に？
きっと皆がそう思ったのだろう。警戒と緊張の空気がもろに伝わってくる。
杉元「…知り合いかい？」
そう言いながら杉元は銃を肩からゆっくり下ろす。
こんなところでやり合うつもりなのか…？
キロ「アシㇼパの叔父だっけ？あれ？でも耳が…」
貴『……はぁ』
これから何かあるたびにこんな空気に耐えなくてはいけないのか…？
そんなことをミツキはぼんやり思い、気が遠くなる。
…
その後、囲炉裏を囲んで網走へどう向かうのかについて話し合うことに。
谷垣「網走へ向かうのか。ここ小樽から網走の中間地点が旭川、旭川には第七師団の本部がある」
白石「そうだ！第七師団の本部に鶴見中尉のこと密告したらどうかな？」
谷垣「本部には鶴見中尉の息のかかった人間もいる。連隊長の淀川中佐だ」
白石「それじゃ意味ねぇかー…」
キロ「いづれにしても、どこかで荒事になる。ここに寄っていこう」
そう言ってキロランケが示した場所は札幌。知り合いの銃砲店があると話した。
キロ「武器や爆薬を安く買えて足もつかない」
杉元「爆薬？」
物騒な話になってきそうだ、とミツキは溜息を小さくはいた。
…
話があらかた落ち着いた後、白石が「便所！」と言って出ていったのでミツキもこっそりと後からついていき、建物の陰に隠れて様子見していた。
貴『…』
もう一人建物から出てくるのを物陰から確認すると、それが杉元であることが辛うじて分かった。
杉元「…白石、そっちは女性用の便所だぞ」
白石「！？」
貴『…何してんだあの人……』
ミツキは白石のドジに呆れてため息を吐きながら、じっと二人を観察する。
白石「……なあ杉元、あの男連れていって大丈夫なのか？」
杉元「…別にお前と峰山のことだって信用してねぇけど」
白石「……」
貴『…』
あの人信用されてないのか。駄目じゃん…
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作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年2月25日 22時
