伍拾陸話「真夜中の秘密」 ページ10
炭治郎side
うぅーん…まだ痛い……。
月凪さんの地獄の機能回復訓練から三日経ち、俺は真夜中厠の為に起きてきていた。
ギシ、と縁側の木の板が軋む。
グルグルと肩を回しながら歩いていると、ふと己の耳がリン、と鈴の音を捉えた。
ひょっこりと顔を出すと、縁側に月凪さんが立ち静かに月を見上げていた。
ふわりと、夜風が俺と月凪さんの髪を揺らす。
白銀の髪が月光を浴びて輝いている様に見えて、思わず息を呑んだ。
チリンと、月凪さんの鈴の紐飾りが揺れた。
まるで風鈴の様な、涼やかな音。
身体は動かさずに、瞳だけが此方を向いた。
「…竈門か」
炭「こんばんは、月凪さん!
任務帰りですか?」
「あぁ、少しばかり用事があってな」
それっきり月凪さんは口を閉じてしまった。
…会話が続かない…。
どことなく微妙な雰囲気が流れむむ、と口を閉じた。
何となく月凪さんと同じ様に月を見上げていると、横の月凪さんが静かに口を開いた。
「…俺には、姉がいるんだ」
まるで独り言の様に、月凪さんは話し始めた。
語り掛ける様なそれに、俺は思わず彼の方へ目を向けるが変わらず月を眺めていただけだった。
「穏やかだが真っ直ぐな人で、とても強い」
いる、という事は過去形ではない。
まるで遠くの誰かを想う様だった。
不意に、月凪さんの耳飾りがユルリと揺れた。
それがまるで、金月さんの真っ白な瞳の様で──。
───あ。
ふと、唐突にいつか金月さんと交わした会話を思い出していた。
─私ね、弟がいるんだ。
──…弟?
─そう、弟。
不器用だけど優しい子でね、とっても強いんだ。
「だが、鬼によって離れ離れになってしまった」
─でも、鬼に襲われて離れ離れになっちゃったんだ。
「だが、今もこの腐った世界の何処かで生きている」
─でもね、今もこの美しい世界の何処かで生きている
「命を賭けても守りたい、大切な存在だ」
─何物にも変え難い、大切な存在なの
その言葉が、いつかの金月さんと重なった。
顔も名前も、何もかも違う筈なのに。
二人が無関係だとは、どうしても思わなかった。
だから、ここで俺は地雷に触れてしまう事になる。
炭「…あの、すいません……そのお姉さんって、もしかして金月さんじゃ無いんですか?」
◇◇◇
大正コソコソ噂話
男主と夢主は、どちらも己の事を認めていない。
もう一度家族に戻る資格など無いと思っている、哀しい姉弟。
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きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» テンキュー!はいごみ収集車にぶちこむぜ☆オルァ! (2020年8月8日 0時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
みかんといちご - きーねちゃんさん» はーい!ニクマン\(^-^ )ブンッ (2020年8月8日 0時) (レス) id: 085b083a26 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - kiki11241さん» なる……予定です!(おい)すいません頑張ります! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
kiki11241(プロフ) - あれ本当に杏寿郎オチかな? (2020年8月5日 19時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» へいパース!僕今ならゴムの手袋を五万枚重ねてるんで大丈夫でーす! (2020年8月4日 22時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年7月9日 18時