陸拾捌話「面影を馳せる」 ページ23
カナエside
堪える様に歪な笑みで笑う己の妹を見て、ここ数年の間で随分変わってしまったなと私は眉を下げた。
私が上弦の弐と相対し重症を負い引退してから、妹のしのぶは変わってしまった。
今まであまり引かなかった口紅を引き、私の羽織りを継ぎ……しまいには私を模した様に物腰柔らかになった。
理不尽な事を言われてもニコニコ笑い、しまいにはあれだけ憎んでいた鬼に慈悲を向ける始末。
それでも、溢れ出そうな憎悪は少しも留まる事を知らなかったが。
私はギリギリ助かったとはいえ昏睡状態に陥っていた為、しのぶの変化に気付くのが限界まで遅れてしまった。
目覚めた後、すぐにしのぶの事を問い詰めたが妹は姉の様にニコニコと当たり障りの無い暖かくも何処か冷たい笑顔を浮かべていた。
その姿を見て、私は一瞬で"手遅れ"だと悟った。
例え大怪我を負っても、身体が動くようになれば無理をしてでも任務へ向かう。
でも、今回は運が良かった。
彼女……雫ちゃんが見付けてくれなければきっともっと酷い事になっていた筈。
雫ちゃんに感謝しないといけないわね……。
因みに、ベッドの端に置いてあったのは今年の試験を突破した隊士達の物だ。
伊之助君はツヤツヤのどんぐり、善逸君は美味しそうなお饅頭、炭治郎君は色とりどりのお花をそれぞれしのぶのお見舞いの為に持ってきていた。
後、金木犀の花は──言わずもがな雫ちゃんが持ってきた物だ。
療養の邪魔になってしまうからと、お見舞いに訪れる回数はまちまちだったけどね。
し「……姉さん」
カ「ん?なぁに?」
ひとしきり泣いた後、しのぶが静かに話し掛けてきた。
それまでは私も無言で背中を摩っていた為、もう良いだろうと手を離した。
し「…私を送り届けたのは、雫さん……なの?」
カ「!」
その言葉に、僅かに目を見開く。
カ「…どうして、そう思ったのかしら?」
動揺を隠すように、僅かに首を傾げて聞き返した。
し「…誰かに背負われてる時、長い黒髪がぼんやりと見えたから。
姉さんかと思ったけど、蝶の飾りをしてなかった……それに何より、金木犀の懐かしい匂いがしたから」
カ「…そうなの。
……えぇ、貴方をここまで運んで来たのは紛れもない雫ちゃん本人よ。
それに、しのぶの代わりに脇腹に傷を負ったのも彼女」
し「ッどうして…?あの人は……」
カ「答えは単純。
貴方が"大切"だからよ。
彼女が善人だろうが悪人だろうが、しのぶをここまで運んで助けたのは変わりないわ」
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きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» テンキュー!はいごみ収集車にぶちこむぜ☆オルァ! (2020年8月8日 0時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
みかんといちご - きーねちゃんさん» はーい!ニクマン\(^-^ )ブンッ (2020年8月8日 0時) (レス) id: 085b083a26 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - kiki11241さん» なる……予定です!(おい)すいません頑張ります! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
kiki11241(プロフ) - あれ本当に杏寿郎オチかな? (2020年8月5日 19時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» へいパース!僕今ならゴムの手袋を五万枚重ねてるんで大丈夫でーす! (2020年8月4日 22時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年7月9日 18時