【鬼滅の刃】姉ちゃんは俺が守る。弐 (ページ19)

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陸拾伍話「お届け人」ページ19

カナエside

カ「……？」

夜の帳も落ち切った頃、夢と意識の境でコツコツという物音がし目が覚めた。
ムクリと起き上がり、何となく窓を見やると──雫ちゃんの鎹鴉…では無く鎹鷲がコツコツと窓を静かに叩いていた。

眠い目を擦りながら、窓をガラリと開ける。

カ「どうしたの？雫ちゃんの鎹鷹じゃない。
……って、あら？」

静か過ぎて気付かなかったが、傍にはしのぶの鎹鴉がいた。
何だか、異様な雰囲気に感じる。
ふいっと、来いと言わんばかりに雫ちゃんの鎹鷲は扉の方へと頭を向けた。

カ「…扉へ？分かったわ、ありがとう」

雫ちゃんの鎹鷲の頭を一撫でし、小走りに扉の方へと向かった。

──血の匂いが、するわ。

カ「──！！雫、ちゃん…しのぶ……」

『…夜分遅くにごめんね、カナエちゃん』

気絶しているらしいしのぶを背中に背負った傷だらけの雫ちゃんを見て密かに目を見開いた。
しのぶの顔は赤く、所々に見える怪我のせいか呼吸は荒い。
──多分、風邪だ。

『丁度任務の場所が近かったの。
大丈夫、後は隠に任せた
──ごめんなさい、カナエちゃん』

…最近では、雫ちゃんは私の事を前の様に"カナエちゃん"では無く"カナエさん"と呼ぶ。
それでもしのぶの事は"胡蝶さん"と呼ぶ。
……信用、してくれているのだろうか。

我ながら自惚れとしか思えなかったが、何故かそう思わずにはいられなかった。

一応私は中立の立場に居る。
元柱とはいえ、私の発言力は酷く薄いから。
私に出来る事と言えば──元だけど蝶屋敷の主として、彼女の出禁を解除する事位しか出来ない。

でも、それをするには"姉"としてしのぶの誤解を解かないといけない。

思わず目を伏せると、唐突に頭に柔らかくて暖かい彼女の手が乗った。

カ「…雫ちゃん……？」

どうやら無心で撫でていたらしく、すぐにハッとして手を退かした。
…撫でられるなんて、何年ぶりかしら。
しのぶは最近撫でさせてくれないし…。

すぐに離れてしまった温もりを名残惜しく思いつつも、彼女からしのぶを受け取った。
軽く応急処置はされていたが、それでも隠し切れない血の匂いにほんのり眉を顰めた。

『ありがとう、カナエちゃん』

そう言って、雫ちゃんは夜に溶ける様に去っていった。

久しぶりに腕に感じたしのぶの重さは、寧ろ前より軽く感じた。

カ「…こちらこそありがとうよ、雫ちゃん」

夜闇に向けてそう投げた言葉には、当たり前だが誰も返事をする事が無かった。

◇◇◇

難産ェ……。