陸拾肆話「過労」 ページ18
しのぶside
…あれ?痛く、ない……?
ぼんやりと霞みがかかった意識の中で、誰かの怒鳴り声が聞こえた。
し「!」
ガクッと身体から力が抜けるが、地に伏す事は無く胴辺りに誰かの腕が回されて支えられた。
女性らしい、細い腕だ。
ぼんやりと霞む視界の中で、サラリと綺麗な黒髪が揺れた。
だが負傷か過労か、霞む視界では正確にその人物の姿を捉える事が出来ない。
し「…姉、さん……?」
し「!」
ガツンと、投石物が人影の頭部に当たった。
先程私が投げられた小石よりも遥かに大きかった。
グラリと人影の頭が揺れるが、ブンブンと頭を振って耐えていた。
だが、その拍子に頭から流れ出ただろう赤い血が飛び散っていた。
ふと、腹部辺りが濡れている事に気が付いた。
吹き飛ばされはしたが、腹部を斬られてはいない筈だ。
ならば──···。
し「…!貴方、血が……!」
カクリと地面に目を受け、刃先が赤く染まっている脇差が落ちているのを見た。
その次に、人影に目を向けると口らしき所からタラリと赤が垂れていて思わず血の気が引いた。
『私は大丈夫、貴方はひとまず休んでいて』
ふわりと、目元を掌で塞がれる。
柔らかくて、暖かい手だ。
──あ。
金木犀の良い匂いが、優しく鼻を撫ぜた。
これ、雫さんの…。
だんだんと意識が薄れていくが、耳障りな叫び声はいつまで経っても止むことが無い。
頭の中にこびり付くその声に、思わず不快感を覚えた。
──雫ちゃんが私を虐めたのぉ!萌香辛いよぉ…。
そうやってべそべそと泣く萌香さんと、周囲の怒鳴り声が何故か重なって聞こえた。
何故だろう、萌香さんは被害者の筈なのに。
だけど、その中でも人影の凛とした声が響いた。
『彼女はただ自分の使命の為に動いているだけ。
自分達の不手際で事を招いたのに、それを他人のせいにして正当化しないで下さい。
貴方達の情報は既に知っています、金銭を受け取る代わりに生贄を差し出しているのでしょう。
貴方達のやり方にとやかく言うつもりはありませんが、それを他人のせいにするのは如何なものかと』
そこで、私の意識はぷっつりと途切れた。
ただ、一つだけ──やや激しめに揺られる中で、何か暖かい物に包まれてる感覚があった。
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きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» テンキュー!はいごみ収集車にぶちこむぜ☆オルァ! (2020年8月8日 0時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
みかんといちご - きーねちゃんさん» はーい!ニクマン\(^-^ )ブンッ (2020年8月8日 0時) (レス) id: 085b083a26 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - kiki11241さん» なる……予定です!(おい)すいません頑張ります! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
kiki11241(プロフ) - あれ本当に杏寿郎オチかな? (2020年8月5日 19時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» へいパース!僕今ならゴムの手袋を五万枚重ねてるんで大丈夫でーす! (2020年8月4日 22時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年7月9日 18時