月夜の逢瀬。 ページ26
side無し
…………懐かれちゃった。
内心ダラダラと冷や汗を流しながら、鏡花はそう独りごちた。
あの不思議な出会いから数ヶ月後……鏡花と響の関係は途切れる事無く続いていた。
と、言っても流石に会うのは夜だけだが。
というのも、日中普通に鏡花に近付く響を見て激怒した龍次郎が響の目の前で彼女を失神するまで殴り続けたのが原因らしいが……。
流石にそれがトラウマになったらしい、それ以来日中の鏡花に近付く事は無かった。
可哀想な事をしてしまった。
だが、基本的に日中は関わらないだけで鏡花の目が覚めた深夜等は普通に会っていた。
しかし……。
『……???(汗)』
響「だァ!」
ここまで懐かれるとは、流石に賢い彼女も予想は出来なかったようだ。
最近たっちが出来てきた。
鏡花を支えに、足をプルプルさせながらもひしっと抱き着いている。
困惑しながらも、振り払う気にはなれない。
『え、えーと……』
……抱っこすれば良いのかな?
日中、響をまるで宝物のように抱っこする両親の姿を何度も見た事がある。
確か、脇に手を入れて……、
『よっ…と』
少々ふらつきながら、響を抱っこする。
抱っこした響は存外暖かくて柔らかくて、思わず目をパチパチと瞬かせる。
始めて感じた温もりだ。
慣れない感触に何だか手がゾワゾワする。
『…………』
心做しかほわほわした気分になっていると─────不意に、遠くから声が聞こえた。
使用人「坊っちゃま?起きていらっしゃるんですかぁ?」
『ッ……!!』
まずい───!!
咄嗟に響に衝撃を与えぬように優しく布団へと降ろし、自分は押し入れに詰め込まれている布団の下へと潜り込んだ。
不思議そうに首を傾げている響に心臓がどくどくと高鳴る。
久しぶりに感じた恐怖感だった。
足音が、近付いてくる。
床が軋む音が聞こえてくる。
─────スタン、と襖を開く音が静かに響いた。
頼む、バレないで……!!
心の中で祈りながら、ギュウッと固く目を瞑る。
脂汗が額を伝う。
使用人の猫撫で声と、響の何処と無く不満げな声がやけに鮮明に聞こえてくる。
使用人「……あら?この押し入れ、何か膨らみが…」
『……ッ!!』
鏡花の隠れている布団の隙間から、使用人の足が間近に見える。
ギリッと歯を噛み締め、念の為懐に忍ばせていた簪を取り出そうとし─────不意に、泣き声が響いた。
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます!てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子!鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子!!もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます! (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます!お待たせしてすみません!これからも読んでくれると嬉しいです!! (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルカ | 作成日時:2021年1月31日 23時