最悪な家族。 ページ16
side無し
どうやら鏡花の両親は、跡継ぎが欲しかったらしい。
確かに跡継ぎがいれば、自分らが死んだ後も店を続ける事が出来る。
ここだけ聞けば、別に普通の望みだ。
しかし───その鬱憤が、全て幼かった鏡花に向けられていたのだ。
中性的な顔立ちをしているとはいえ、鏡花は女人。
つまり、いらない存在だった。
「あんたなんか産まなきゃ良かった」「この穀潰し」「酸素を無駄に消費するしか能が無い癖に」「役立たず」「無能」「死ね」「消えろ」「忌み子が」「生きる意味なんて無い」
最早呪詛とも言える言葉の弾丸が、当時齢6歳だった鏡花に無残にも降り掛かったのだ。
京「あーあ、あんたが男だったら良かったのにな〜」
それが、母京子の口癖であった。
言の葉という言葉があるように、言葉は時に毒になる。
その非人道的な言葉が、大人になった今でも毒のように彼女を苦しめていた。
まるで、呪いのように。
しかし、鏡花は強かった。
女の自分が嫌いなら、男の格好をすれば良いのだと。
子供ながらの、無垢な寂しさであった。
『よし、やってみよう…!』
そうと決まれば有言実行。
両親の目を盗み、いらなくなった…正確には龍次郎がお酒を掛けダメにしてしまった男物の着物を隙を見て盗み出し、裾をチョキチョキと切って自分の身体のサイズに合わせた。
これは龍次郎が自分に投げて寄越した着物だ。
所々穴が空いているが、それでも着れるだろう。
贅沢なんて言ってらんない。
いつも陰鬱な気分だったが、この時ばかりはわくわくと胸が昂っていた。
漸く、自分も家族の一員として認められるかもしれない。
だって、まだ名前すら呼ばれたことが無かったんだから。
いつも「奴 隷」とか「忌み子」しか呼ばれて来なかったけど……今度こそ呼んで貰うんだ!
ふんす!と意気揚々にハサミを動かしていく。
いつになく張り切っているように見える。
碌な教育すら受けていないとはいえ、流石呉服屋の娘。
数時間と経たず、自分のサイズに合わせた着物を仕立てる事に成功した。
少しサイズが大きいが、仕方ない。
早速袖を通して見たら、酒と煙草の匂いがした。
『……。』
若干異臭に顔を顰めながらも、気分晴れやかに廊下へと出る。
早速父龍次郎を探さねば。
とててて、と廊下を駆ける鏡花をたまたま使用人が発見し───そしてニヤリ、と口元の笑みを深めた。
使用人1「旦那様!旦那様ーー!!ここに、ここに泥棒がいます!!」
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ルカ(プロフ) - りあてゃんさん» コメントありがとうございます!てぇてぇ姉弟…。響くんは圧倒的に鏡花ちゃん子なのに使用人と親共に未来は無い(殺意) (2021年2月23日 10時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
りあてゃん - んあ”ぁぁぁ.....響くん良い子!鏡花ちゃんに似てめっちゃ良い子!!もう使用人とか親とかは全力で滅んでくれ、お前らは二人の幸せを邪魔する存在でしかない(( (2021年2月21日 11時) (レス) id: 15f52de452 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!この家はクソ野郎しかいない……(おい)いつもありがとうございます! (2021年2月17日 22時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 立場を利用してキョウカをいじめる使用人が何よりもムカつきます。旦那サマがやってることは決して良いことではないけど、使用人のやってることはそれ以前に卑怯だと思うんです。 (2021年2月17日 18時) (レス) id: 7c7117969d (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - あなたさん» ありがとうございます!お待たせしてすみません!これからも読んでくれると嬉しいです!! (2021年2月17日 7時) (レス) id: 29975453d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルカ | 作成日時:2021年1月31日 23時