雨の日と流せなかった涙と湯船。FK

8(K side) ページ8

シャワー！シャワーで冷まさなきゃ……







そう思った時、藤ヶ谷の手が伸びてシャワーから出てるお湯に触れる。







藤「ぬる……温めなきゃだめだろーが。」







設定温度を変えられて、降り注ぐ温かいシャワーを確認して、シャンプーを手に取る藤ヶ谷に場所を譲ろうとしたら、そのまま座らせられて、俺の頭を洗う藤ヶ谷。







「へ？」






藤「シャンプー……目に入ったら痛いから瞑ってろ。」






言われた通りにしか動けない体で、目を閉じて優しく頭を洗ってもらう。







藤「そのまま……そのままでいいから聞いて。





昔さ……呼び出した日、雨が降ってるのに待たせてごめん。」








昔話を始めたその一言目があの日を思い出される。







今目をつぶっていてよかった。じゃないと溜まる涙を藤ヶ谷に見られてしまう。








「どんくらい前の話だよ……もう忘れた。」







続く言葉の未来が怖くて、忘れたふりをするくらい許してほしい。







するとまた温かいシャワーで俺の頭を洗い流す。







この先は自分でやれるからって、お互いシャワーを浴びて、湯船に浸かった。







流れる沈黙。風呂中に漂う大好きな藤ヶ谷の香り。







濡れた肌は、雨に打たれていた藤ヶ谷を思い出して、思わず言葉を発してしまう。








「雨に打たれて、帰った日は泣いてたのか？」







俺の言葉にいつの日かなんて含まれてないけど、感じ取った藤ヶ谷は、ゆっくり話す。

9(K side)→←7(K side)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す