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今日は帰ろう。こんな状態で練習しても上達する訳ない。寧ろ下手になっちゃう。
楽譜をしまい、ピアノにカバーをかけ、電気を消したとき、急にドアがガラッと勢いよく開いた。
「はぁっ…はぁっ…」
「グルッペン…？」
そこには息を切らしたグルッペンがいた。
1階の生徒会室から4階のここ、音楽室まで階段を駆け上がってきてくれたのだろう。
「間に合うてよかった…うわっ！」
「グルッペン…！」
私の中で何かが爆発して、気付いたらグルッペンに抱きついていた。
「バカっ…！来いって言ったのはっ…聴かせてくれって言ったのはっ…そっちでしょ⁉」
「…すまん」
「私っ…寂しかった…っ」
「…うん。ほんまにすまんかった」
グルッペンは私の頭をずっと撫でてくれた。
すごく温かくて、もっと涙が出た。
「さっきは取り乱してごめん…」
「責任は俺にあるから気にせんでええよ」
…確信した。私、グルッペンのこと、好き。
ちょっと会えなかっただけでこんなに胸が苦しくなったの初めて。
恋をするってこんな感じなのかな。小説で読むよりももっと苦しくて切ない。
伝えたい。でも、グルッペンはカッコいいし、成績もいいし、きっとモテるから、他の人に取られちゃってるかも…。
いや、そもそも私のものじゃないか。
やっぱり、伝えなくていいや。
「…なぁ。言いたいことあんねんけど」
「…何？」
「Aが好きだ。俺と付き合ってほしい」
「…え？本当に？」
何回もその言葉が頭の中でこだまする。
え？私のことが…好き？両想い、って奴？しかも名前呼び…！
ていうか、私が言おうと思ってたこと…先に言われちゃった。まぁいいか。
「俺がウソ告する奴に見えるか？」
「まさか！全く思ってないよ」
…そんなの、答えは決まっている。
「…私も大好きです！こんな私でよければ、よろしくお願いします」
「…ほんま⁉」
「私がウソの返事する奴に見える？ふふっ」
「人に告ったん初めてなんやて…こんなこと言わせんなや」
「…え？」
「え？」
初めて…なの⁉イケメンだからてっきり済ませたものだと思ってた…。
「…A」
「何？」
「ピアノ、弾いてくれへんか？聴きたい」
「当たり前でしょ！いくらでも弾いてあげる！」
その日、私の友達第1号は、恋人第1号に変わりました。
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作者名：ウィング＆テンライ | 作成日時：2018年9月23日 13時
