光を重ねたあの日から。 ページ3
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ホームルームが終わり、椅子と床が擦れる音で、教室が騒がしくなる。
「黒木、これ落ちてたぞ」
机の中の教材を鞄に詰めていた時、上杉が、俺の前にシャープペンシルを持った手を出してきた。
『あぁ、ごめん。ありがと。』
「お前、気づいてなかっただろ。」
こういう時、いつも呆れたような顔つきの上杉が、今日は真顔だった。
『確認し忘れただけだよ。』
少し笑ってそう言えば、一瞬探るような目付きになったものの、諦めたのか、椅子をしまいながら話題を変えた。
「あっそ。
じゃ、今日の秀明はサボんなよ。
もうノート渡さんからな。」
『分かってるって。今日はちゃんと行くからさ。』
上杉はそのまま肩に鞄を掛け、教室を出て行った。
昔から不器用な上杉の気遣いには気づいていたが、こればかりは受け取ることは出来ない。
誰が何をしようと、この現状が変わることはないから。
昨日のことは、思い出したくもない。
自分の外側から内側、正に身体の隅々までを
慣れたくもないこの惨状を、右腕の
そんな負の感情から一日で抜け出すには、闇があまりに深すぎて。
上杉にまで心配をかけてしまったが、上杉とは、それなりに長い付き合いだ。
あいつも何か勘づいてはいるだろう。
『気分転換、ね。』
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あおい(プロフ) - 完結後、読ませていただきました。どのお話も、少し考えさせるような、奥が深いもので、私もこういう小説を書いていきたいです。 (2020年4月28日 7時) (レス) id: 331ddf8f4c (このIDを非表示/違反報告)
りぃあ♪# - 完結おめでとうございます!どのお話も奥が深く、読んでいてとても考えさせられました。とても面白かったです。 (2020年4月18日 8時) (レス) id: 77648adcbf (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 完結おめでとうございます。どのお話もすごく心に残り、自分と重ね合って読んでいました。すごくいいお話だったと思います。 (2020年3月31日 19時) (レス) id: eb71493e70 (このIDを非表示/違反報告)
小幅 - とても面白い作品ですね!続きが楽しみです。 更新、無理しない程度に、頑張ってください! (2020年3月30日 15時) (レス) id: 62007663da (このIDを非表示/違反報告)
はんな(プロフ) - 情景描写がくわしくて、上階が本当に浮かんできます!素晴らしすぎる… (2020年3月28日 11時) (レス) id: 3170240b5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷・結・ゆいなー・あお・ここは x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hp-rei/
作成日時:2020年3月24日 19時