モブの逆襲1 ページ18
いつもなら己の保身を第一に考えていることだろう。ここでコイツと戦えば補助監督の規定に背くことになり、クビは確定。いや、クビになる前に本当に首が飛んでいるかもしれない。
これは仕事面でも安全面でも危険であるということは一目瞭然だ。
だが、それでも逃げてはいけない。
ここで逃げれば俺の後ろにいる星漿体が殺されるのは確かだろう。コイツが殺されれば、それこそアイツが死んだ意味が分からなくなる。
この女だけでも、護らなければならない。
これは怒りでも正義感でもない。
――お人よしの馬鹿ヒロインを輝かせる、モブの宿命だ。
ヒロインはモブに星漿体を託し、力尽きた。そして星漿体は生き延びてコイツは名誉ある死を迎えた。
ちと無理はあるが、最終的にモブがヒロインたちの努力を引き継ぐという意外性重視の発想に関してだけは百点満点だな。
「……最後の最後、悪足掻きさせていただこうじゃないですか。
いや、やってやんよオッサン!!」
オッサンは慈悲一つ無い目でこちらに銃口を向ける。
恐怖と怯えで身体を小刻みに震わせている星漿体の手を握る。まさか、妹以外の女とこんな風に手を握ることができるなんて、光栄の極みだぜ。状況は最悪だけどな!
「星漿体、走るぞ」
「えっ、うえ!?」
唐突なる俺からの指示で動揺する星漿体には構わず、握った手を勢いよく引っ張り、来た道に向かって走り出す。やべー、こんなにドキドキする鬼ごっこ初めて。
逃げている間に何度も発砲音が聞こえるが、全ては当たらない。いや、当たっているが全て
「い、いったいどうなって……!? 弾が、すり抜けてる…………?」
「説明は後、今は逃げることだけ考えろ。じゃないとアイツらの犠牲が無駄になんぞ」
「なっ、犠牲とか言うな!!」
「犠牲になってんだろーがお前を護るために!! 五条も夏油も黒井も漣も!!!
だが俺はまだ生きていたいしお前のために犠牲になるとか無理だから黙って走れ!!!」
「じゃあ何で私を助けたんだよ!!!!」
俺を怒鳴りつける星漿体。走るのに夢中で表情は見えないが、声からしておそらく泣いているのだろう。
自分のせいで死んだ人間がいる事実を受け入れたくない、といったところか。だから犠牲という言葉に過敏に反応する。それを否定していないと自分を保てなくなるから。
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ガシヤマ(プロフ) - 蘆花さん» コメントありがとうございます! 蘆花さんの作品は楽しく読ませていただいています……! 夢主君を気に入っていただけて嬉しいです。 (3月31日 18時) (レス) @page7 id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - やだすきなにこの夢主くん。あるあるが全て詰め込まれてて最高です! (3月31日 18時) (レス) @page11 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます! 文句言いながらもやる時はやってくれる夢主君ってかっこいいですよね、私も大好きです。 (3月11日 21時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
サンドレラ2世 - 夢主かっけぇぇ! (3月11日 21時) (レス) id: 0ee11eb3e3 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - 星雀さん» コメントありがとうございます! うまく完結できるようストーリー構成はこだわったので嬉しいです。 (2月8日 21時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ガシヤマ x他1人 | 作成日時:2024年1月7日 17時