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34 鏡よ鏡 ページ35

「失礼するよ!さぁ私だよ!君の太宰治だよー!……あら誰もいない、おかしいなぁ」


 阿呆面で、部屋の中を見渡す彼を、


 此方から共に、二人で見ていた。


 現実の世界を、
 鏡の世界から。


 身体と身体を、密着させた状態で。


 でもそれは、何故か、強く、Aからくっついている状態で。


 どきどきどき。
 彼の鼓動が速まる。


 透明な、
 眩しい、
 静かな世界。


「え……?……ここ、もしかして……いつも君がいる所?き、綺麗……だね」


 感嘆している谷崎だが。
 ふと。


「……Aちゃんの異能ッて、他の人、此方の世界入れたッけ……?」

「…………」


 うん、
 そうだよ、
 入れるよ。


 あちらからは、他人は、追い掛けて来れない、だけで。


 本当は、とても簡単に、干渉出来る。


 でも。


 漸く手にしたその端末の画面を、
 見せた。


【私に触れたら、私と一緒なら、
 こちらの世界に入れる。


 でももし離れてしまえば、
 鏡が身体を貫く。】


 念入りに。
 念入りに。


【だから絶対、離れないで。】


「え、わ、分かッた!」


 その文字並びに慄いたのか、
 ヒヤリとした顔、ギュッと強まる手の力。


 何故此方の世界に連れて来られたのか、全く皆目検討つかずに、彼は震えている。


「…………」


 二人きりの密着した状態を見られたくない為だけに、
 床下の鏡世界にこの男と入る羽目に、なってしまった。


 緊急時だからといって、
 いや、今思えば全く緊急時ではなかったのに。


「ありゃあ、うーん、うん!少し、出直すかな!」


 漸く退室していった太宰を視て、緊張が解けたのか、それとも。


「……………………」


 誰にも内緒にしてたのに。


 十年、振りか。
 人を、連れてきたのは。


 もう、二度と誰も、連れてくる気はなかったのに。


 もう二度と、一人だってーーーー


「………………」

「え……Aちゃん、どうしたの?!ごめン、ごめンね?!」


 この世界が歪んで視える時は、
 決まって頬を涙が伝っている。


「………………」


 違うよ、
 この涙は、貴方のせいではない。


 只、思い出してしまっただけ。


「…………」


 そう、本当は、
 貴方は何も悪くない。


【ごめんなさい。】


 此方の世界に来たら、
 人の温もりに触れたら、

 何故だろう。


【あの時、ナオミちゃんを助けられなくて、ごめんね。】

35 貴方で彼には私が秘密→←33 みえないつながり



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 谷崎潤一郎 , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年12月22日 22時

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