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30 森 ページ31

列車の止まった駅は、裏側が深めの森だった。


 確か、この森というか山の車道を登っていけば、社の潜伏先の一つである旅館に着く筈……。


「…………」


 本当は降りて、社員達の側にいたい。
 こういう時、端末があるにも関わらず、誰とも連絡先を交換していないのは。

 本当に、
 本当に。


「小さな駅だねー、街のとは違うんだね」


 この子。
 夢野久作、此処では降りないみたい。


 それはそれで有り難い。
 一応この先に緊急時に降りる駅があるけど、それより先に行ってしまえば。


「動いたぁ」


 列車は動き出す。
 車窓の景色も動き始める。


「!」


 然しAが見たのは。


 此方に向かって山を走り下ってくる探偵社事務員の春野と、


 彼の妹、
 谷崎ナオミ。


「…………」


 上で何かあったのか。
 緊急避難なのか。


 何時もなら、


 鏡の中に、
 透明の園に居たら、


 この状況は分かっていたかもしれないのに。


 現実世界は、
 こんなにも不確かで、
 こんなにも不可解だ。


「どうしたの?」

「…………」


 あの二人の足のはやさ、
 列車に乗れてしまうかもしれない。


 恐らく、夢野久作の、ポートマフィアの狙いは、
 組合か探偵社の何方かを狂気で翻弄し、出来る限り戦闘不能にする事が目的。


【何でもないよ。
 歩くの遅くてごめんね。】

「いいよぉー!」


 きっと事務員である二人の事は知っている。
 探偵社は身内をも守るから、助けるから。


 ならば、社員ではない、


 つまり知らない私の方が、
 まだ有利ってやつかもしれない。


【前の車輌、見に行こうか。】

「うん!運転するとこ、見てみたい!」


 二人が降りる駅まで、
 私が時間を、稼ぐ。









 列車が止まった。
 例の駅。


「…………」


 未だ、彼女達とは再会出来ていないので、此処で、どうか、無事に。


「じゃぁねAさん」


 その少年は、私の手をパッと離したかと思うと、降り口へ颯爽と走っていく。


 え


 ちょっと、待って。


「優しくしてくれて、ありがとう!ばいばーい!」


 真逆、緊急時の駅まで、あちらには筒抜け?


 駄目、待って。
 お願い、


 待って。



「 後ろ

 の





 だぁ

れ?」



 少し遅れて、
 追い掛けて、降りた先。


 ひひははっイひ
 キャはハハハァははうえっひひひっっ


「お兄さんの狂気は、どんなのかなぁ?」


 其処には。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 谷崎潤一郎 , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年12月22日 22時

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