19 其は誰の声? ページ20
「……ちゃん」
誰かの、声が聞こえる。
とても安らぐ声。
「Aちゃん、ねェ」
そう、
私、本当は、
「Aちゃん……」
この人に――
「Aちゃん、大丈夫?!」
「…………」
目の前に、
谷崎潤一郎の顔。
近っ!
目を見開く。
心拍が速くなる。
吃驚した。
気が付けば、私も賢治君と同じように巨大な人形の手、加えて可愛いリボンやフリルで拘束されている。
そして、谷崎潤一郎も。
「いないと思ッたら、賢治君と捕まッてたンだね。
ごめンね、遅くなッて。今、敦君と一緒に、君たちを助けるから」
え?
「………」
「え、な、何?何か、あッた?」
いないと、思ったらって。
Aのポカンとした顔を見て、ビビる谷崎だったが、窓の外をちらりと見やり、少し小さな声で云う。
「あ、そうだ。いいかい?此れからこの扉が開いたら、声を発しちゃ駄目だよ?……あ……ううン、何でも、ないよ……ごめン」
私に声が発せられるわけ無いじゃない、
という文句よりも、頭の中を駆け巡る思考。
いないと、思ったらって。
私、いつも、いないのに。
どうして――?
少し首を動かせば、他にも幾人かの人々、そして、捕らわれているナオミの姿を発見する。
「!」
「うン、ナオミが捕まっちゃって……ボクが悪いンだけど……」
Aの視線を見て、彼が酷く落ち込んだ表情をしてきたので。
なんか、イライラしてくる。
「でも、諦めないよ。きッと、助けるからね」
笑顔。
「…………」
そう、か。
彼が助けたいのはあくまで一番はナオミちゃん、そして社員である賢治君、街の人々、そして、私。
偶然私が近くに吊るされていたから、話しかけていただけ。
偶然私の意識が回復したから、だけ。
窓の外を見れば、組合のモンゴメリと敦君が、アンと鬼ごっこをしていた。
凄い、あの速度についていっている。
流石、生きる事に一番執着している。
あれ?
あの端っこにいる
白衣の医者っぽい人、何処かで―――
「あ……その、Aちゃん、えッと、こんな時に難なんだけど……」
ゴニョゴニョと、緊急時なのに眉毛の下がった谷崎が又話しかけて来た。
煩いなあ、
今記憶を辿っているのだから、
話し掛けて来ないで欲しいのだが。
そうして、私がそっぽを向くと、
ダァン!と扉が開いた。
104人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午 | 作成日時:2019年12月22日 22時