17 初めての空 ページ18
「…………」
Aは目の前のモンゴメリを見据え、そして状況理解に努めようとする。
これは、異能力。
異能で創られた空間。
私と違って、他者を此方に自由に運べる異空間。
私と、違って。
頭では事態を飲み込もうとするが、身体は動かない。
「ねぇ貴女、何と云うお名前なの?」
「…………」
「あら、あたしは名乗ったのに、あくまで喋らないおつもり?それとも吃驚して喋れないのかしら?まあまあ、それはそれは可哀相!」
「……………」
恐らくそういう意味ではない。
そうか、
私、可哀相なの。
うん、
物を使わないと自分の気持ちを伝える事が出来ないのは、
可哀相、よね。
不思議な色の空には月、チェック柄の床、
浮かんでいる様なこの空間、他には窓と白いドアのある家――
「!」
の中に、賢治君が、見えた。
巨大な人形の手で拘束され、気を失っているのだろうか、動かない。
「あぁ、あの子、やっぱりお知り合いなの?うふふ、此方の要求断られちゃって、とりあえず見せ占めとして、一緒に遊んで貰ったの!あと、これから大きなビルも一つ位コレクションに加えようと思ってて!」
楽しそうに、喋っているが、
此方は全く楽しくない。
何だろう、この平行線。
武装探偵社に向けられる、
この謎の感情を。
「…………」
「貴女若しかして……声が出ないのではなく、喋ることが出来ないのではなくて?」
「……」
意外と鋭いその観察眼、
素直にコクリと、頷いた。
「やぁっぱり!此処に来た方、どうしたって、みーんなお口が軽くなるの!恐怖や焦り、驚き、絶望、色々でね!」
近付いて、くる。
「直ぐに気付かず、大変申し訳なかったわ。ほら、そこのチョークで、お名前だけでも教えてくださらない?」
コロンと転がる白いチョーク、傍を浮いてる小さな黒板。
「………」
この空間では、何が起きるか、私に何が出来るか、解らなくて、判っているから。
Aは、漢字と平仮名とローマ字で自身の名を書いた。
書き終わると、その黒板はふよふよと漂い、
「まあ、Aちゃんって云うのね!私たち、お友達になれるかしら?」
「…………」
その問いにも、答えない。
答えられない。
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年12月22日 22時