中島敦 海鮮丼【リアビーバ-様Req.】 ページ3
「わ……宝石箱みたい」
敦の感嘆通り、
鮪、サーモン、鰤、海老、イクラ、烏賊、帆立、蟹、雲丹、白子、穴子、縁側の十二種が飾られた、絢爛豪華な海鮮丼。
「ご飯が見えない!」
分厚く大振りで、その煌めきから新鮮さが一目で判る。
「頂いて、いいんですか?」
「要らなイ?」
「いえ!先輩、有難うございます!頂きます!」
鮪を一切れ、その輝きを眺め、思い切って食べれば。
「とけた!」
頬を押さえ、乙女の様に感動。
「こんなの初めてです!」
「其れは良かッた」
ニコリとAは破顔し、窓の外の海を見る。
あの時、敦が助けに来なかったら……。
身震いし、それを忘れる為に、鰤をご飯と頬張った。
トロける脂、歯ごたえのある身、
醤油と山葵とのハーモニー。
見れば、敦は半分以上胃に収め始めていて。
「一寸待ッて。全部食べちゃ駄目」
「はへ、え?」
その一言で箸を止めた彼は目をぱちくり。
Aはにんまりと。
「君をこの店に連れてきた真の理由は此方」
「そ、それは!」
椀に少し残った海鮮丼。
そこに、香る出汁と刻み海苔をかければ――
さっぱりとしていながら、魚介の旨味溶ける、海鮮茶漬け。
「茶漬け……!」
「御礼、だからね」
そして、
それは海鮮丼よりも、
瞬間で腹へ消えていった。
「はあ!御馳走様でした!」
「いーえ」
外に出ると、夕暮れが海を赤く染め上げていて。
「A先輩」
それを背にし、
「僕、此れからも頑張ります!先輩を、どんな時でも守り抜きますから!」
相変わらず。
云った後に重大さに気付き赤くなる、この虎君。
その、後ろ。
「ほう。暗合か天命か、Aに人虎……僕の標的が並んでいる」
真っ黒な、雲で、
「最期の晩餐は楽しめたか?」
陰る。
「芥川君……」
「A先輩!」
彼は此方の手を掴んだ、と思うと、そのまま横抱きにして、走り出す。
少し吃驚した。
だがAは、
「頼むね」
笑う。
「お任せください!」
彼も、自信に満ちた表情で。
「待て人虎……今Aを置いていけば、何方も楽に屠ってやるぞ」
「誰が置いていくか!」
頼れる後輩。
マフィアの狗に追われようが、
組合の白鯨に囚われようが。
信じているから、ね。
Aはぎゅっと、
敦もぎゅっと、
互いを想い、
その力を込めた。
78人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
午(プロフ) - 美紅さん» 美紅様、リクエストありがとうございました。ごめんなさい、リクエストは現在受け付けておりません。ショートケーキは苺たっぷりの物が好きですね。いつもありがとうございます。また宜しくお願いします! (2021年10月28日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
美紅(プロフ) - リクはショートケーキの好物をお願いします (2021年10月26日 18時) (レス) id: 2c9c8b9b13 (このIDを非表示/違反報告)
もな - ごめんなさい!!!私の不注意で…!いや私アイス大好きなんですよ〜!関係ないんですけど() (2021年6月19日 0時) (レス) id: 2d978a239f (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - もなさん» もな様、先日のリクのご感想ありがとうございました!そして新たなリクエストをありがとうございます。申し訳ありませんが、現在リクは受け付けておりません、ご了承ください。この時期はずっとアイス食べたいですね!またのご来場をお待ちしております! (2021年6月12日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
もな - ありがとうございました…!!とっても良かったです………!!!!!出来ればリクエストでマーク・Tさんでアイスでお願いしたいです……!出来ればお願いします!! (2021年6月12日 14時) (レス) id: 2d978a239f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午 | 作成日時:2020年1月1日 23時