2 文豪グルメ 短編集【文スト】

太宰治&芥川龍之介　蟹クリームコロッケ【月華様Req.】 ページ7

「はいA、熱いからゆっくり食べるんだよー」


　新鮮なラードから勢い良く揚がったコロッケを、太宰が差し出す。
　綺麗な狐色に、Aの瞳はきらきら輝くが、ハッとし、彼を睨み付けた。

　Aは、芥川の両手の中に大事そうに抱えられている。


　然しそれは、幼気な少女の姿で。


「えー可愛いー！うっそ、本当に？！」


　最初も、太宰がかなり面白いものを見つけた時の反応をして。


「あくたがわ…だから、おしゃむにはあいたくなかった…」

「サ行言えないの可愛い！」


　敵の異能により、記憶を残しての心身子供化。現在、中原中也が敵を追っているそう。


「お願いします、太宰さん」
　
「マフィアのモノは全て捨てたけど…Aだけは私の元に帰って来るんだねぇ」


　そうして、異能解除の為に抱っこするが。


　戻らない。


　異能力『人間失格』を使っても戻らないと言う事は。


「異能者本人が、異能を解除する位意識を失うまで、か。中也に望みを託すしかないらしいね」


　と言う事で何故か今、餌付けされている。

「くっ」

　A、太宰治からの施しは受けたくないのに、精神が幼いからか、食欲には勝てなくて。

　無我夢中で、かぶり付いた。


　サクサクの衣の中から溢れるホワイトソースと、たっぷりの蟹の風味が絶妙で、

　下町で手軽に購入出来るにも関わらず、贅沢さを感じる逸品。


「おいひい…わっ」


　ゴロリと、他よりも大きな蟹肉が飛び出た。


「お、Aちゃん大当たり！凄いね！」

「もういい……あくたがわにあげる」

「あらそ」


　太宰はAの食べかけを、雑に芥川の口に突っ込んだ。咽た声がした。


「おしゃむがつかえないなら、もうようはないからっ」


　芥川の口の中が落ち着いた所で、拠点へ帰ろうとすると。


「帰っちゃうのー？残念！」


　極上の微笑みと。


「じゃあ……またね」


　ちゅっ、と口に口が重ねられた。


「なっ」


　珍しく吃驚顔の芥川。


　その時、丁度、
　Aは、元の大人の身体に戻った。


「「あ」」


　着ていた服が弾け飛んだ瞬間、芥川がすかさず羅生門でAをぐるぐる巻に、横抱きする。


「お、治…今……」

「…愛の力ってやつ？」


　丁度、中原中也が敵を撃破したのか、
　本当に愛の力かは不明だが。


「治……絶対殺す…」

「手伝います、Aさん」

「こわっ！」


　それは
　三人にとって、


　忘れられない味となった。

芥川龍之介　水羊羹【月華様Req.】→←太宰治　　　鯛焼き【アオイ様Req.】

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