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泉鏡花   鰻丼【雪ノ葉様Req.】 ページ27

「ちょ、ま、んん?!」


 ぬるっとAの手から逃れ、
 にゅるりと、鰻が服の中に。


「ひゃぁわ」


 身体の何処を這っているのか分かるのに、全く捕まえられない。


「ちょ、くすぐっ、ゃわぁ」


 生きが良過ぎる鰻!


 頭の中は真っ白、右往左往していると。


 刹那、


 尾を掴み、天高く上げ、

 俎板の上、その顎目掛けて目打ちを刺し、
 自由を封じた、泉鏡花。


 鰻は無言で藻掻いている。


「――Aに仇名す者は、例え魚でも容赦はしない」

「き、鏡花ちゃん……!」


 お美事!
 カッコいい!


「本当にありがとう!今度は仮死状態にしとく!」

「いい」


 そんなこんなで、鰻の調理、開始である。

 先が三角に尖った専用包丁を、Aは握り締め、

 先ず中骨まで首を切る。
 鏡花ちゃんのお陰で鰻が動かないので、やりやすい。

 頭の切り口から胴を割く。皮まで貫通させず、一気に背を開いた。


「おぉ……」


 鏡花ちゃんが唸ってくれた。小刀捌きのプロである彼女からの、最も嬉しい反応。

 臓や血綿の取除き、中骨処理、頭と胴を切り離し、残り骨を削ぐ。

 最後に背鰭を切れば……


「はあっ、出来た!」

「お疲れ様。後はやっておく。Aは湯を浴びてきて」

「ありがとー」


 鰻の新鮮さの為、そのまま捌いたので体中ぬるぬる。

 鏡花が竹串を刺し始め、Aは風呂場まで直行、シャワーを浴び始めると、芳ばしい薫りが鼻を擽った。


 風呂からあがると、鏡花は蒸し器で鰻を蒸している。

 丼にご飯をよそい、鰻の頭や尾を煮詰めた特製タレを少し振りかける。


「A、準備出来た」


 やる気の凄い鏡花ちゃんに、鰻を盛ってもらえば出来上がり。


「綺麗な焦げ目……流石鏡花ちゃん」


 箸で簡単に切れる身を炊きたてご飯と。

 鰻はふわふわ柔らかくて、優しい甘ダレに肉厚の身がしっかり絡む。


「んー!美味しい!」

「A、はい」

「ありがと!」


 山椒を振りかければ、ピリッとした中に、上品な爽やかさ、格別の美味しさ!


「美味しいねぇ、ありがとう鏡花ちゃん」

「私は、何も」


 キョトンとした彼女に、伝える。


「入社、おめでとう」


 心を込めて、
 伝えると。


「……うん」


 心から、
 笑ってくれた。


 その顔が可愛くて、
 嬉しくて。


「今度は一緒に、何作ろっか」

「えっと……湯豆腐と……あと」


 その幸せは、続いていく。

 

泉鏡花   フルーツ牛乳→←谷崎潤一郎 柿



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 短編集 , 甘い   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます!また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します!更新頑張ってください! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です!ありがとうございます! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです!めっちゃ良きでした!!突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません!また募集している時にいきます!更新待ってます!(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場!!(*゚∀゚*)嬉しいです!(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます!只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します! (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月25日 17時

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