05 メス、硝子窓の向こう ページ6
森鴎外は関心を抱いていた。
彼女――筧Aのその異能力に。
「凄いねえ。治癒の異能はとても珍しいからね、与謝野君以外にもいるとはねえ」
与謝野晶子。
武装探偵社に所属する女医で、彼女の『君死給勿』は治癒の異能力である。確かに、それ以外に見たことはない。
「ここに来る前に、映像で彼女の歌を聴いたけれど、その時は何も起きなかったのに」
首領はこちらを見やった。
「ほら、私が今朝、メスで切ってみた傷もこの通り、綺麗に治っているよ」
そう云って左手をひらひらさせる。いや、傷があったとか分からなかったけど、と樋口は困惑する。
「彼女の異能は、実際に耳にしないと効かないみたいだ。それにほら」
メスを取り出すと、彼は左手の甲に一線、傷を入れた。
が、歌が聴こえるこの場では、その傷は治っていく。
「興味深いねえ」
元医者として、好奇心をくすぐられるのだろう。首領がわざわざ、ここまで足を運ぶなんて。
そしてAの方に視線を送る。
彼女は既に――5時間は歌っていた。
時たまハーブティーを口に運ぶが、それ以外は歌っている。
楽しそうに。
嬉しそうに。
歌っているのは、よく知っている歌もあるが、異国の歌もあった。
が、4時間を超えたくらいで、その歌はどこの国の言葉でもないのではないか、という謎の言語で歌われ始めた。
しかし、音色は美しい。
とても想いが込められているのが分かる。
その世界に入っているのか、空になったハーブティーを交換する時も、こちらには反応せず、気付いていないようだった。
これが彼女の云っていた、
トランス状態という奴か?
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時