治癒の異能を持つ少女はポートマフィアに愛される【文スト】

43　職人、医務室 ページ44

筧Aは膨れっ面で、長く広い廊下を歩く。


　家族を人質にするなんて……！
　完全にポートマフィアより悪い人達だった！


　や、まあ、ポートマフィアも黒い噂が絶えないけど！


　んんん！
　……このストレス発散したい！


　歌、どこかで歌えないかな。
　部屋に、帰ればいいのかしら。


　それにしてもここ、広いなぁ……。


　キョロキョロと迷っていると。


「Wow！ 君がミス・カケイだね！ 小さくて可愛いね！」


　突然肩を抱かれたので、構え気味に振り返ると、明るい髪色の青年が笑顔で立っていた。


　Aはギョッとする。


　彼が、シャツの胸元を大きく開けていたからだ。


「君本当に僕より一つ下？ 日本人は、なんか若いね！ 黒髪に黒い瞳！ 東洋の神秘だ！ ヤマトナデシコ！」


　マシンガントーク……外国の方って滑舌もいいんだなあ。


「……貴方は」

「おお！ このトウェイン様のことが知りたいんだね！ OK！」

　
　なんか凄いカラッとした人だなあ、とAは思った。


「僕はマーク・トウェイン！ 組合の職人さ！ 宜しくね！」

「ふぇ、ふぇろーくらふと……私は、筧Aと申します」

「発音も可愛いなあ！ 君、こんな所で何してるんだい？ どう、良かったら――あ」


　1つの部屋の前で、彼は立ち止まった。


「ここは？」

「医務室、だよ。……君、治癒の異能を持ってるんだよね！ この中に凄い怪我した人達がいるから、治したらいいんじゃないかな！」

「え」


　組合の人の怪我……一応、ポートマフィア的には敵なのかしら……。


　でも、敵味方とか、関係ないよね？


「わ、私で良ければ……」

「決まりだ！」


　マークは勢い良く扉を叩いた。


「ホーソーン！ ホーソーン起きてる？！」

「――なんですか、騒々しい」

「君に朗報だよ！」

「お嬢様が眠っていますから、お静かに。中にも入らないでください」


　落ち着いた男性の声が、扉の奥から聞こえた。


「治癒の異能を持つ女の子を連れてきたんだけど、どうかな、ミッチェルも、治療して貰ったら！」

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