01 我が上の星は見えぬ ページ2
辻村深月は深呼吸する。
重い扉と、その前に見張りが4人。何れも、政府の抱えるトップエージェント。
合言葉のコードを告げると、一人がリモコンを操作し、その扉の奥から厚い音が何重にも響き始める。
特一級危険異能者というのは、大抵がこういう扱いだ。
危険過ぎる異能を持つが故に、
性別、性格、身分、人種、信条関係なく、
丁重に匿われる、
厳重に囲われる、
心底恐れられる。
そのトップに君臨する、
綾辻行人を除いては。
幾重もの鉄格子が払われ、防弾ガラスが払われ、最後の鉄の扉がギギギと開いたかと思うと、
やっと、彼女の部屋への通路が見えた。
敬礼し、その扉をくぐる際も、熱センサーやら金属センサーやら重量センサーやらが隈無く通っている音が聞こえる、辻村は緊張の中を進んでいく。
その目的地の前まで来ると、かなり簡素な扉が開いた。
「内務省 異能特務課、捜査官・辻村、入室します」
そして中に入ると。
星の輝く黒い瞳が、こちらを虚ろに見つめていた。
だらんと、ベッドから落ちそうな身体、額から大量の血を流しながら。
「なっ!?」
辻村は拳銃を構え、セーフティを外し、部屋の中を見回す。
少し広い彼女の部屋の中は、窓がないということ以外は普通の少女の部屋。
ファンシーグッズや趣味の品々が散乱し、本棚やクローゼットの配置がずれている。
荒らされた形跡。
争った形跡。
侵入口は今通ってきた扉一枚。
入室するまで、異常はなかったはずなのに、私が通路を通ってきた一瞬で――?
監視カメラを一瞥し、部屋に2人以外居ない事を確認すると、彼女――石(せき)Aの遺体に近づいた。
何故?
何時?
どうやって?
何にしても、こんな若い彼女が、この厳重過ぎるセキュリティの中、死んでしまうなんて――
そして辻村が、その美しい顔の目の前に来ると、
「ばあっ!」
その遺体が、笑って声を上げた。
「うっわあ!?」
辻村は飛び跳ねる。
その遺体はずりずりとベッドからずり落ち、色素の薄い長ったらしい髪をかき上げ、ワンピースのズレも直さぬまま、ケラケラ笑った。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年6月30日 0時