46 キッカケ ページ46
もっと昔の記憶を夢に見た。
「オマエ、生き残りか？」
その赤い太陽の様な髪色を見て、
天道虫の様な人だと思った。
「ぁ……」
「喋らなくていい」
男は冷静な態度で落ち着き払っており、
私達を救いに来たのだろうか、
それとも拐かしに来たのだろうか、
一体、誰なのだろうか。
その顎の無精髭が、羽織っている外套が、記憶に刻み込まれて行く。
「............」
虚ろな目を動かした。
私達を売買していた人達が地面に血塗れで伏せている。
虫の息だ。
「............」
もう、既に、昔の自分は思い出せないが、
新しい記憶を重ねて、生きている。
思い出せそうだけど、思い出したくない。
そして折角助けられたのに、
私は結局、この後、また違う組織に拐かされて外国まで行ってしまうのだけれど。
でも何故か、この記憶は覚えている。
「…………」
男は私を抱える。
外に、連れて行ってくれるのだろうか。
「…………」
何か、当たっている。
彼のジャケットに四角い何かがある。
何故か、手を伸ばした。
男が気付く。
「嗚呼ーーーー昨日読んだ時に、そのまま入っていた様だ」
彼は特に制止しようとせず、
彼女は掴んだ其れを引っ張って、見る。
あの時の少女の疑問を文字にするなら、そう。
紙の、束？
「何だ、小説に興味があるのか」
「？」
何ですか其れ？という顔を彼女はした。
すると男は続ける。
「小説はいいぞ。小説を読む事は、自分では無い自分になれるからな、まあ……少しの間だけだが」
まるで醒めない夢の様に。
「し う、 せ、 つ……」
「あぁ」
そして彼は続ける。
「何時か、俺の本が書店に並んだらーーヨンデクレ」
「…………」
其れは、きっと、無理な話だ。
視界が暗くなる。
意識が遠のいて行く。
“オツカレサマデス。ダザイクンカラ、ショウシュウガカカリマシタ”
また、誰か来たようだ。
「…………」
其れは、きっと、無理な話だ。
だって私は、本が読めないから。
理解は出来る様にはなったけど、
文字を忘れてしまったから。
“ワカッタ。スグニ、テッシュウスル”
今迄も、これからも。
私に、
文字は必要無い。
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午(プロフ) - 尤莉さん» 尤莉様、素晴らしいご感想ありがとうございます！ 虫クン何しても愛おしいですよね〜！ 更新頑張りますので、応援宜しくお願い致します！ (2023年4月25日 22時) (
レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
尤莉(プロフ) - 文章も丁寧で読みやすくて、すごく面白いです…！虫クンの反応が可愛くて仕方がないです…こんな作品を書ける午様を尊敬します…！更新頑張ってください、応援しています…！ (2023年4月25日 21時) (レス) id: fc1333ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - うえむらせさん» うえむらせ様、ご感想ありがとうございました！ 虫クンの小説が増えるといいですね〜！ 更新は頑張ります！ 応援宜しくお願い致します！ (2023年4月6日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
うえむらせ - はじめまして！最近虫くんにハマっているのですが、虫くんの小説が少ないので毎回更新を楽しみにさせていただいております。これからも応援しているので、更新頑張ってくださると嬉しいです！ (2023年4月6日 22時) (レス) @page23 id: ec28fead31 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - セプンイレプンいい気分〜さん» セプンイレプンいい気分〜様、ご感想ありがとうございました！ 虫クンの布教活動と同じ位面白くして行けるように頑張ります！ 応援ありがとうございます〜！ (2023年2月8日 21時) (レス) id: 0e7339a9e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2022年12月28日 23時
