34 微睡み ページ34
「いでだだでで」
「せんせーかったいですねー」
ソファに俯せになっている先生の腰のツボを両手で思いっきり押さえ付けると、彼からは錆びれた金属みたいな音がした。
日々の運動不足も相俟って、
Aの施術に、情けない声を上げている。
「…………」
こんな弱い力でも激痛らしい。
「主様もですけど、書き物をされる方はここら辺のツボが……」
「うぎぃあぁああ」
玩具の様だった。
いや、一寸、虫みたい......と、
笑みが溢れそうになる、何と云うか、愛おしい感情。
あの世界での身体的変化は元通りになるのに、まるでそのまま引き継いでいるかの様。
何時もの拷問に比べれば全く問題ないのに、
それとこれとは違う痛さだった。
「そ、そういえばポオ君が発って暫く経つが、静かだな」
「何か空港が探偵社さん達に包囲されてるとかー、テレビでやってました」
「何故」
流石隠れ家として用意されたこの空間は、誰も寄せ付けず、見つからない。
本当に遮断された世界だ。
彼と彼女しか、いない。
「隠居の身とはいえ、毎日こう為体に生きてしまうと、駄目になりそうだな、こう何も無いと」
「あら、そーですか?」
優しい声が降り注ぐ。
「私は先生と居て、毎日楽しいですよー」
「ごふぉ」
噎せた。
そして顔面をソファに押し付け、その熱さを冷まそうとよく分からないエネルギーが発生している気がし始めた。
一寸何云っているのか分からない。
おわ、ナンダコレ。
死にそう。
「そ、そそういえば、あの洋館での殺人事件。真相は何だったのだ」
話を差し替える。
苦し紛れだが、何もしないより会話をしている方がマシだった。
「殺人事件」
ああ、あれか。
相対的にAは緩やかに記憶を読み込む。
えーっと、確か。
「あー、洋館の主である御爺様が飼っているペットに噛まれて、死んじゃったみたいですよ」
「はあ?」
人間の仕業では無くペット?!
不慮の事故ではないか!
はあ!?
ポオ君がそんなの書くか?
暇潰しだからか!?
然し、あの本の世界を抜け出したのだから、
本当の事なのだろう。
「はぁ……そう、か」
いやまあ然し、
ないないない。
動物を使った殺人の推理小説はあるが……
俺やヨコミゾなら、
こうして、ああして、
あんなトリックで、
犯人を仕立てあげ、
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午(プロフ) - 尤莉さん» 尤莉様、素晴らしいご感想ありがとうございます! 虫クン何しても愛おしいですよね〜! 更新頑張りますので、応援宜しくお願い致します! (2023年4月25日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
尤莉(プロフ) - 文章も丁寧で読みやすくて、すごく面白いです…!虫クンの反応が可愛くて仕方がないです…こんな作品を書ける午様を尊敬します…!更新頑張ってください、応援しています…! (2023年4月25日 21時) (レス) id: fc1333ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - うえむらせさん» うえむらせ様、ご感想ありがとうございました! 虫クンの小説が増えるといいですね〜! 更新は頑張ります! 応援宜しくお願い致します! (2023年4月6日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
うえむらせ - はじめまして!最近虫くんにハマっているのですが、虫くんの小説が少ないので毎回更新を楽しみにさせていただいております。これからも応援しているので、更新頑張ってくださると嬉しいです! (2023年4月6日 22時) (レス) @page23 id: ec28fead31 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - セプンイレプンいい気分〜さん» セプンイレプンいい気分〜様、ご感想ありがとうございました! 虫クンの布教活動と同じ位面白くして行けるように頑張ります! 応援ありがとうございます〜! (2023年2月8日 21時) (レス) id: 0e7339a9e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2022年12月28日 23時