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30 イジワル ページ30

「わー、善い景色ですねー」


 部屋に入ると夕陽が射した。
 水面が光り、美しい。


 真逆、湖畔の洋館で殺人事件が起きていようとは思わない程の絶景だった。


 その眩さに目を細めながら、Aは寝台へ移される。
 離れだが、ポオの屋敷より遥かに豪邸で、家具は調度品、床から天井まで、全てが価値のある部屋。
 飾ってあったカレンダーは、六年前のものだった。


「一応、診ておくからな」


 彼女の靴と靴下を脱がせると、薄く赤くなっている箇所があった。


「さぁ、とっとと帰るぞ、外に」

「あー……ね、何処に置いてあるんでしょうね、この本の謎」


「……………………」


 そこからかー!
 ポオ君!!!!


 タダで教えてくれんのか!!!


 若干の苛立ちを彼女を見る事で押さえ付ける。早く彼女を回復させてやりたいのに、此処には探偵等は居ない。


「…………」


 …………帰れる、のか?


 ぐぬぬぬぬ!


 とりあえず、再度靴を履かせる為に、その小さな踵に触れると、


「ぁ……っ」


 Aがびくりと体を震わせた。


「………………」


 土踏まずを這って足先に触れる。


「は……ひゅ」


 染まる頬、
 酸素の足りない口元、
 潤む瞳、


「せんせ、其処…も、止め……て」


 ぎしりと……寝台が鳴った。


「………………」


 何故か此方も、震えた。


 おかしな感情に、
 囚われて、


 静かに彼女から離れると、


「はぁ……ぁ」


 Aは息を整える。
 鼓動の音が、聴こえそうなくらい、息が上がっていた。


 互いに?顔で状況を確認しようとする。


 が、よく分からない。


 とりあえず。


「……疲れた……」

「……は……い。お疲れ、様です」


 沢山歩いて、汗をかいて、疲れたから。


「私は風呂にでも入る」


 と云うと、


「……えー、せんせーだけ、ズルイです」


 と云うので、


 仕方無く、
 仕方無く、


「お風呂場は、えーっと、其処を右に……」


 裸足の彼女を抱え、其の部屋を後にした。

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(プロフ) - 尤莉さん» 尤莉様、素晴らしいご感想ありがとうございます! 虫クン何しても愛おしいですよね〜! 更新頑張りますので、応援宜しくお願い致します! (2023年4月25日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
尤莉(プロフ) - 文章も丁寧で読みやすくて、すごく面白いです…!虫クンの反応が可愛くて仕方がないです…こんな作品を書ける午様を尊敬します…!更新頑張ってください、応援しています…! (2023年4月25日 21時) (レス) id: fc1333ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うえむらせさん» うえむらせ様、ご感想ありがとうございました! 虫クンの小説が増えるといいですね〜! 更新は頑張ります! 応援宜しくお願い致します! (2023年4月6日 22時) (レス) id: 26aa10f063 (このIDを非表示/違反報告)
うえむらせ - はじめまして!最近虫くんにハマっているのですが、虫くんの小説が少ないので毎回更新を楽しみにさせていただいております。これからも応援しているので、更新頑張ってくださると嬉しいです! (2023年4月6日 22時) (レス) @page23 id: ec28fead31 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - セプンイレプンいい気分〜さん» セプンイレプンいい気分〜様、ご感想ありがとうございました! 虫クンの布教活動と同じ位面白くして行けるように頑張ります! 応援ありがとうございます〜! (2023年2月8日 21時) (レス) id: 0e7339a9e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年12月28日 23時

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