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10 月 ページ10

それからというもの。


「……A、A」

「ふぁ、ぁ、お疲れ様です、織田作さん」


 月の綺麗な晩、その喫茶店でうつらうつらと寝惚けていた彼女を起こす。
 目の前のカップからは、緩やかに湯気が立ち上っており。


「進んだか?」

「かーなり」

「その割には気持ち良さそうに寝ていたな」

「…………。ねー!織田作さん!起こしてくれて、ありがとうございます!」

「……………………」


 その元気な眼差しを見ていると、
 カレェが運ばれて来た。


「な、なんと、もうすぐ第一章が終わりそうなんですよ。感想を云えないのが残念です」


 中々進まない様に思えたが、一度読み始めれば順調だった。
 彼女自体はのんびりしているが、矢張り次の頁がとても気になる様な本らしい。


 一体、どんな物語なのだろう。


「織田作さんが来る時丁度に、いつもカレェが来ますねぇ」


 Aの読書が進むよう睡魔から守る。


「悪いな」


 織田に、その本を貸す為に読書をする。


「んんー善い香り。これなら、眠りません」


 小口葱のたっぷり乗った、出汁の薫るキーマカレー。
 細かく刻まれた野菜や挽肉が、更に風味を増していた。


「……うん、美味い」

「それは善かったです」


 スプーンを持つ手が限りなく速い感じすらする。
 そして何だかほわほわしている織田がいる。


「十段階評価だと、どの辺りですか」

「またか?…………十で、いいか?」


 どの店のカレェも十って云うな……。


「何がおかしい」

「いえいえ、本当に、お好きなんだなぁって」


 零れる笑みに、


「嗚呼……そうだな」


 吸い込まれそうになりーー


「本も、好きなんですよね」

「ん」

「小説、好きなんですね」

「そうだ」


 前よりも柔らかくなったその表情。
 前よりも多く弾んでいるその声色。
 前よりも近い感じのするその空気。


「Aは珈琲か」


 眠気覚ましか、それとも好きだからか。


「珈琲って、カレェに入れるとコクが増して美味しいですよねぇ」

「…………珈琲、を?」


 そんな、変に妙な、


 二人の関係が始まった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 怜さん» 怜様、ご感想ありがとうございます!お優しいお言葉で、泣きそうでございます。これからも頑張ります! (2022年1月31日 20時) (レス) @page45 id: 05323f7eaa (このIDを非表示/違反報告)
- 場面を想像させる様な綺麗で幻想的な文に、しっかり作りこまれた物語。今まで読んだ織田作の夢小説の中で1番好きです。これからも頑張って下さい。 (2022年1月31日 1時) (レス) @page45 id: 64384c94d7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 柊 琥珀さん» 柊 琥珀様、ご感想ありがとうございます.......! 嬉しい.......! (2022年1月9日 0時) (レス) @page42 id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 書き方が好みだ……。 (2022年1月8日 17時) (レス) id: 17f9b038b0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Asukaさん» Asuka様、ありがとうございます!めっちゃ頑張って書きます! (2021年8月24日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月27日 0時

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